平庭岳・遠別岳・安家森

久慈市・葛巻町・岩泉町
標高: 平庭岳1059.8m/遠別岳1235m/安家森1239.1m
JR盛岡駅前からJRバス久慈行(白樺号)に乗車、平庭高原または江刈川で下車

【写真】安家森山頂

2009年9月27日

 808 JR水沢
 913〜1015 JR盛岡→JRバス白樺号に乗換(料金2,050)
1209 平庭高原バス停
1225 平庭岳登山口
1250 平庭岳
1304 ジョウロイ平
1321 次峰台
1348〜1400 遠別岳
1413 巻き道分岐
1421 小沢徒渉(安家川)
1435 安家平
1449〜1500 安家森
1513 安家平
1524 遠別岳登山口駐車場
1532 馬淵川源泉
1731〜1816 江刈川バス待合所(料金1,970)
2012〜2029 JR盛岡
2136 JR水沢

 今回の目的地である遠別岳・安家森は文献※1の未踏峰として残っていた山のひとつである。文献※1に示されているように袖山高原の登山口に至るには公共交通機関の便がないので徒歩またはタクシー利用とならざるをえない。徒歩(またはタクシー)で往復となると時間的な余裕がないのと費用面が割高となる。また県内陸部から袖山高原のある葛巻町までの公共交通機関はJRバス白樺号が最も便利であるが内陸南部の小生の自宅から電車乗り継ぎでは始発に間に合わない。そこで単独ではなく集団登山か何かのイベントに便乗するのがいいだろうと思い当面は情報収集となった。
 気に懸けているといろいろな情報がでてきた。ある個人サイトでは盛岡前泊→白樺号始発便→葛巻でタクシー乗換→袖山高原→安家森・遠別岳・平庭岳縦走→平庭高原の報告があった。ある登山用品店では平庭高原〜遠別岳・平庭岳のツアー客を募集していて今年コースの刈払いがされ歩きやすくなっているとのことである。また7月に久慈駅前に宿泊したとき市内の観光パンフレットを入手、平庭高原にも宿泊施設があることを知る。決定的だったのは陸中海岸自然遊歩道「陸中海岸北限のみち」の帰路、久慈駅前から白樺号に初めて乗車。夜間であるが平庭高原を車窓から見学した。途中、葛巻でトイレ休憩があるがこの日は葛巻町のお祭りで町内は混雑していた。これでおぼろげながら平庭高原、葛巻の土地勘ができ困難と思っていた遠別岳・安家森登山の敷居はかなり低くなった。
 集まった情報を元に登山計画を立てる。経路は白樺号→平庭高原→平庭岳巻き道→遠別岳→安家森→袖山高原→車道経由(徒歩またはタクシー)→江刈川バス停→白樺号。いつもながら時間の余裕がないので歩行時間短縮のため平庭岳登頂は回避し巻き道を通ることにした。
 睡眠不足、疲労感、足腰の痛みがあり盛岡までの電車の中ではほとんど寝ていた。盛岡駅北通路のJRバスきっぷ売り場で平庭高原までの乗車券を購入。バスの出発まで時間があるので駅東口の滝の広場のベンチで待機する。ストレッチ、マッサージ、ツボ刺激を行う。同時に気温が上がり暖かくなるにつれ体調が回復してきた。白樺号の車内で再び睡眠をとれば(昼間まで寝ていることになるが)疲労感も軽減するだろう。
 平庭高原で下車。駐車場、売店があるが閑散としている。バス停から葛巻方面に少し戻り左折、県道29号(平庭峠方面)を進む。沿道の土手にウメバチソウ、ノコンギク、アキノキリンソウ、ハンゴンソウが咲く。樹木はシラカバ、ミズナラだが標高が高いせいか細い木が多い。
 左手にキャンプ場の施設が見えると、右手に未舗装の上り坂道が分岐するがこの入口には車止めの柵と平庭岳登山口の道標がある。柵の脇を擦り抜け坂道を上る。すぐに塩の道の遊歩道が右手に分岐する。ここでは直進しブナ、リョウブの林内を進む。道沿いにはノブキが多い。間もなく林を抜け富士見平と呼ばれる野芝の広がる開けた場所に出た。所々にあるシモツケがピンク色の花を付けている。ナンブアザミ、ノハラアザミ、シラネアザミ、リンドウが咲く。短い草の上にうっすらと残る踏み跡を頼りに進んでいく。平庭岳を示す道標に従いダケカンバの林内に入ると本格的な登山コースに変わる。約200m間隔で山頂までの距離を記した道標が立つ。計画では平庭岳山頂を経由せずに巻き道を通る予定だったがどうやら見落としたようだ。やや苦しい登りが続くが先を急ぐことにする。
 平庭岳山頂に到達した。灌木に囲まれ展望はない。富士見平0.9km、遠別岳4.7kmの道標がある。本日は時間的な余裕がないので平庭岳〜遠別岳間は極力写真撮りなどの道草はせずペースを落とさずに通過することにしている。遠別岳まで4.7kmということは、コース状況次第になるが時速3kmのペースで進めば約1.5時間(午後2時半頃)で着く計算だ。
 平庭岳から遠別岳方面に下る。突然視界が開けジョウロイ平という草原に出た。ヤマハハコ、ノコンギク、オクトリカブト、周囲に実を付けたカンボクなどが広がっている。礫地なので樹木が育たない環境らしい。ジョウロイ平を少し過ぎた地点にコース分岐点があり平庭岳0.9km、遠別岳3.8km、富士見平1.6km(巻き道)の道標がある。
 しばらくアップダウンの少ない道が続く。西側の展望が良く牧草地の緑が鮮やかである。しかし次第にガスが湧き日射しが遮られ薄暗い天気に変わった。刈払いされたコースは日当たりが良いせいか道沿いにウメバチソウが一面に咲く。適度な間隔で距離表示付きの道標が設置されているのでペースをつかみやすい。
 快適なコースを進んでいくと次峰台(平庭岳1.8km、遠別岳2.9km地点)と呼ばれる草原に着く。ここにもコース分岐点があり巻き道(遠別岳山頂を経由しないで袖山に至る)が右に分岐する。目指す遠別岳は左の道であるがいきなり急な登りとなる。尾根に出ると伐採跡地のササが茂り、根の切り株で歩きにくい。今までのコース状況とは一変したと感じた。一旦鞍部に下るとその先の踏み跡が不明瞭となり樹木に塗られた赤ペンキの目印も途絶えた。樹木の間を縫うようにして急斜面を登り返し次の尾根に出ると再び下草の合間からわずかな踏み跡が続いている。赤ペンキ、標石、道標などもあり登山コースには間違いない。幸いにも途中から刈払いされた道となる。アップダウンを繰り返しながら少しずつ高度を上げていくのでここは体力的に苦しい場面である。周囲の樹木が矮小化し植生の変化を感じられるようになり次はどんな展開になるのか期待しながら進んでいくと赤鳥居が現れあっけなく遠別岳山頂に到着した。
 遠別岳山頂は赤鳥居とその奥に小祠が置かれその脇に鐘が吊してある。鐘を一発鳴らし参拝後、休憩とした。西側斜面が刈払われ草地となっているのでガスが無ければ展望が良さそうだ。小祠裏手も一部刈払われていてこちらからは海が見えるようだがやはりガスで何も見えない。山頂一帯はブナの細木が多い。これから踏み入れる遠別岳〜安家森〜袖山高原のコース詳細は文献※1、文献※2に記載があり初級者向けとのことで今までよりはずいぶん気が楽になる。
 休憩後再び鐘を突き安家平に向けて下山する。道は一直線で最初は急勾配の下りである。樹林帯を抜け草原に出ると巻き道と合流する。ミヤマイボタの実、ミヤマウツボグサ、クルマバナ、ノコンギク。安家平まで3グループの登山客と擦れ違う。ブナ林地帯を抜け牧柵のゲートを出ると牧草地に出た。ここが安家平と呼ばれる地点である。ガスで視界が悪く広い牧草地の中どの方向に進めばよいのかしばらく右往左往する。よく見ると短い草丈の牧草の上にうっすらと残る踏み跡がありこれを頼りにして進んで行く。ガスで全貌は明確でないが前方にお椀を逆さにしたなだらかな形状の二つのピークがある。踏み跡は二つのピークの鞍部に向かった後、左のピーク(=安家森)に向かう。途中に道標もあった。牧草地の中カラマツ、アカマツが点々と立つ。ヤマハハコが咲く岩礫地を横断し安家森の登りに取り付く。途中、鉄条網の柵がある。網の目がばらけている場所をくぐり抜けた(帰路に気づいたがこの場所の網は簡易的な扉構造になっていて上端の針金を外すと開閉できる)。
 灌木地帯を抜けると山頂広場に出た。残念ながらここもガスで展望はない。それでも本日の稜線歩きで遭遇した自然や風景には期待していた以上に満足である。休憩後下山する。牧草地まで下ると数十頭の牛が登山道近くで草を食べているのに驚いた。往路の時はガスで全く気が付かなかったからだ。牛たちの邪魔をしないように遠回りして安家森・遠別岳分岐まで戻る。
 牧草地の踏み跡をたどり袖山高原方面に進む。牧柵のゲートを通過すると樹林帯に入るが間もなく登山口に出た。車道を隔てた反対側に広い駐車場とトイレがある。駐車場の最も奥の場所に案内板が立っている。何が書いてあるのか興味があるので近づいてみると馬淵川源流について、であった。その脇から舗装された遊歩道が斜面の下に向かって続いている。源泉までどのくらいの距離があるか不明だが立ち寄ることにした。左手は牧草地で牛が放牧されている。遊歩道脇にベンチや吸い殻入れがあるが草で覆われている。右手斜面のダケカンバ、アズキナシを見ながら少し下ると作業小屋が見えた。遊歩道は作業小屋前で右に直角に折れる。斜面を30歩ほど登ったところが馬淵川源泉で赤鳥居や案内板があった。
 駐車場まで戻り車道を葛巻方面に進む。袖山高原の牛の放牧地から風力発電の風車群までは展望がよい。途中、イチイの大木の案内板があるが見かけることができなかった。路面には1km間隔で江刈川までの距離表示があるので長い車道歩きであるが現在地が把握しやすい。日没で薄暗くなった頃、国道281交差点角にある江刈川バス待合所に着く。向かい側に店があり店頭窓口でおやきが並べてあるので一ついただこうと思ったが近所の常連客が次々と訪れ座り込んで井戸端会議をしているので躊躇してしまった。近くに蕎麦屋、水車、分校跡があり見所が多い地域である。待合所裏を流れる元町川の沢音を耳にしながらベンチに座ってバスを待つ。定刻から5分遅れてやってきた白樺号に乗車し帰路に着いた。

参考文献
※1「新・分県登山ガイド2 岩手県の山」 藤原直美著 山と渓谷社 2006年6月発行
※2「岩手の里山を歩く」大坊孝男著 岩手日報社出版部2004年4月発行


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