太田薬師・箱ヶ森・赤林山・南昌山

岩手県盛岡市・矢巾町
標高407m,865m,855m,848m
JR盛岡駅前10番線から太田方面行上えぞ森下車
JR岩手飯岡駅口からパストラルバーデン行矢巾温泉下車

【写真】箱ヶ森山頂

2007年10月7日
 616 JR水沢
 722〜730 JR盛岡
 745 上えぞ森
 802 かんぽの宿前
 845 太田薬師
 912 林道
 927 箱ヶ森登山口
1040 下山コース分岐点
1049〜1103 箱ヶ森山頂(プレート10)
1130 赤林山分岐点(プレート20)
1155 赤林山
1220 赤林山分岐点(プレート20)
1300 毒ヶ森分岐点
1327 南昌山1.1km地点(プレート40)
1342 薬師岳
1357 南昌山(プレート50)
1503 南昌山神社
1522〜1557 矢巾温泉〜南昌病院
1613〜1648 JR岩手飯岡
1816 JR水沢

 以前、東根山に登ったとき東根山−南昌山−箱ヶ森へと続く紫波三山縦走ルートがあることを知った。この縦走ルートを使えば文献※1に掲載されている山のうち未踏峰の太田薬師・箱ヶ森・南昌山は一日で登頂することができそうである。地形図と時刻表を眺めながら登山計画を立案した。
 盛岡駅東口10番乗り場から太田方面行きのバスに乗車する。盛岡市街地西部の太田地区を抜けると田園地帯となる。上えぞ森バス停で下車。近くの交差点を南に向かって進む。交差点角にラーメン屋がある。その後Y字路に突き当たるので右折(左折するとゴルフ場方面)。上猪去集落の中に入る。前方に簡易保険保養センターが見えてくる。太田薬師へは途中から左に分岐する細道に入る。分岐点には道標があるのでわかりやすい。この分岐点近くに箱ヶ森方面の登山道の案内板もあった。
 猪去沢を渡り太田薬師方面の未舗装道に入る。リンゴ畑の入口付近で車道は左にカーブするが道標に従い直進する。この直進方向の道の入口には車両が入らないようにロープが張られている。左手がリンゴ畑、右手が杉林の道をしばらく進むと鳥居が見えてくる。鳥居の下を抜け坂道を上る。杉林の中にハンノキ、アブラチャンが点在する。作業道らしく道幅は広い。丁字路で右折しすぐ左手に分岐する階段の細道に入る。細道に入らず作業道を進んでも山腹を反時計回りに巻き山頂に至るようである。
 アキノキリンソウ、オクモミジハグマ、ハイイヌガヤが道沿いに生えている。尚、太田薬師の案内板にはフシグロセンノウが紹介されていた。岩権現を過ぎると間もなく山頂の太田薬師に着く。北東の盛岡市街地方面の展望が良い。樹齢400年のクロビが立っている。このクロビは県内で3番目の大木との事(1番は石鳥谷のサカヒバ、2番は鵜住居神社)。
 下山は箱ヶ森登山口方面に下るつもりであったが道に迷う。太田薬師の社殿左裏から始まる作業道を下るが方向が違うことに気づく。このまま行くと登山時に通った道と合流するようだ。山頂まで引き返し今度は正しいルートを下る。ムラサキシキブ、カエデ、トチノキの落葉樹林帯から薄暗くじめじめしたヒノキの植林地を抜け猪去沢を徒渉し林道に出る。ここで左折(南に進む)。林道は猪去沢の左岸から右岸に移る地点が流され寸断されていた。先日の大雨の被害であろう。この先車は入れない。オガセ滝を過ぎ倒木を越すと箱ヶ森の登山口に着く。トチの実がたくさん落ちている。
 登山カードに記入後左手の斜面に取り付く登山道に入る。登山道の案内板は2種類あり箱ヶ森の周回コース用で距離と所要時間が記された四角形状でシルバー色の鉄板のものと、紫波三山縦走ルート用の直径約50cmの丸形で黄色地黒文字で数字(数字は箱ヶ森登山口から遠ざかるに従い1つずつ増える)が記入されているものがある。以下、紫波三山縦走ルートの道標の数字を(プレートNo.)で示す。スギの植林地は長続きせずすぐに尾根に出てブナ林に変わる。ムシカリが紅葉しているがその他はまだである。ツルシキミ、ツルアリドオシの赤い実が目立つ。単調な上りはブナ原生林休憩地(プレート5)で終わる。やっと一息付ける場所である。
 その後はしばらく緩やかな上り下りとなり歩きやすくなる。途中にクロビの大木がある。箱ヶ森直下の上りが一番きついところだ。急勾配で道の両側にローブが張られている。北向きの薄暗い斜面となるせいか植生にも変化が見られナンブアザミ、ノブキ、オクトリカブトが観察できた。坂を上りきると下山コースと合流しやがて平坦な山頂に着く。100人位の人が休憩しても十分な広さがあるが本日は小生一人のみであった。東面の盛岡市街地の展望が開けている。山頂を示すプレートは中央に立っているホオノキに付けられている。サクラやモミジもがあるがほとんど葉は残っていなかった。これも大雨の影響か。山頂広場の南隅に岩権現が祀られている。周囲にはノコンギクが咲き、その中にヒトツバテンナンショウの赤い実が突き出ていた。ところで山頂には繋温泉への下山ルートを示す道標はあるが南昌山への縦走コースを示す道標はない。恐らく岩権現の裏手から続く細道なのだろうが笹藪が生い茂りこの先道が続いているかどうか不安になる。そこで休憩を早めに切り上げ先を急ぐことにした。
 足下が見えない程の笹をかき分けルートを見失わないように注意して進む。笹が疎らになると樹林帯の中の急な下りとなる。わずかな踏み跡をたどりながら進んでいくが縦走ルートのプレートを見つけほっとする。箱ヶ森(プレート10)〜毒ヶ森・赤林山分岐点(プレート20)はプレートが短い距離間隔で設置されているので助かる。鞍部まで下ると道が明瞭になる。起伏の緩やかなブナ林に変わり株立ち樹形の一本ブナ(プレート19)は休憩場所として適地と思う。
 その先のプレート20の標識を通過しどんどん進んでいく。若干道が藪に覆われているところがあるが迷うほどではなかった。ツリバナの実が目を楽しませてくれる。前方に見えるピークを上り詰めると赤林山の山頂に到達した。南昌山に向かうつもりが道を間違えたらしい。プレート標識は20を最後に見当たらなかったがルートを間違えたからであろう。赤林山頂は展望はないが切り株のベンチがある。ブナに囲まれた場所で静かに昼寝をするには良い場所と思う。計画を変更し下山するか引き返して南昌山へのルートを探索するか考えた結果、後者に決めた。
 一本ブナ(プレート19)まで戻り少し休憩後、南昌山へのルートを探索しながらプレート20まで進む。ここで右に続く踏み跡があるので入ってみると尾根から外れ長い下りの道が続く。しばらくしてプレート23があった。気持ちの良いブナ林の中を進む。毒ヶ森への分岐点(特に道標は見当たらない)からは木立の間から毒ヶ森のピークが間近に見える。当初の計画では毒ヶ森に寄るつもりだったが予定外の赤林山往復で時間と体力を費やしたので見送った。その後は小ピークの上り下りの連続となる。前方にあるピークが南昌山であろうと思って上っていくとそうではなく、それなら次のピークこそ南昌山かと思って上っていくとそうではないといった状況が続く。この付近にはサラシナショウマが咲く。
 プレート40(南昌山へ1.1km地点)の場所は分岐点となっていて、直進すると林道を経由して南昌山神社に至ると思われる。ここでは道標に従い左手の斜面を上る。途中からロープがある急坂となる。これが最後の上りと思うと足取りも重くない。しかし到達したピークには薬師岳・標高771mの標柱が立つ。急坂を下り鞍部から正真正銘の最後の上りに取りかかる。
 南昌山山頂の中央にはスギが数本立ちその下に岩権現が祀られている。東面にせり出すように展望台が設置されている。周囲にノコンギクが群落をなしている。下山は林道を経由し矢巾温泉へ至るコースが一般的のようであるが、紫波三山縦走ルートの案内板に記されている山頂から東面を一直線に下るコースにしようと思った。
 山頂から南へ延びる整備された道を進むと左に分岐する遊歩道のような細道がある。この道に入り数十メートル進むと左手斜面に下る踏み跡がある。この踏み跡を頼りに下っていくとやや心細いが道が続いている。地形図上ではかなり急勾配の下りなのだが最初のうちは普通に歩ける程度の斜面だった。しかし途中から後ろ向きになりロープにすがりながらの下山となる。ロープを持つ軍手が擦り切れた。やっと鞍部にたどり着き一つピークを越し南昌山神社に至った。宮沢賢治は南昌山に何度も訪れたようだがこの道を登ったのだろうか。
 神社に参拝後、林道を下り途中から幣懸(ぬさかけ)の滝を経由する遊歩道を通り矢巾温泉に着く。バス停の前で休憩しながらバスを待つつもりであったが行楽客の車の往来が多くお互い邪魔で迷惑な感じがするので一つ先の南昌病院バス停まで歩く。飯岡駅から電車に乗り換え帰路に着いた。

参考文献
※1「新・分県登山ガイド2 岩手県の山」藤原直美著 山と渓谷社2006年6月発行


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