片羽山(雄岳)

岩手県釜石市
標高1313.2m
JR釜石線遠野駅からタクシーに乗車し登山口下車
JR釜石線釜石駅から岩手県交通バス橋野線に乗車し終点中村下車

【写真】雄岳山頂から雌岳の眺め

2008年7月6日
 616 JR水沢
 752 JR遠野
 833 登山口
 845 一合目
 857 二合目
 903 三合目
 916 四合目
 926 五合目
 940 六合目
 948 七合目
1006 八合目
1011 九合目
1020〜1130 山頂
1138 九合目
1141 八合目
1148 七合目
1200 六合目
1211 五合目
1232 三合目
1247 二合目
1258 一合目
1310〜1322 登山口
1424 熊野神社
1436〜1505 中村バス停
1548〜1553 JR釜石
1924 JR水沢

 文献※1を眺めながら片羽山の登山口まで行くにはどうしたらいいか考えた。遠野駅から遠野市大草里まで路線バスが通じており、そこから徒歩で笛吹峠(県道35号)を越え登山口まで行けそうだ。車道歩きが長いがちょうどいいバスの便があり一日中歩き通せば山頂までの往復は何とか可能と思われた。一方釜石側からは鵜住居から県道35号を西に進み橋野経由中村まで路線バスが通じている。登山口近くまでバスで行けるのはいいが午前中のバスの便がなく帰路しか利用できない。結局、笛吹峠越えを往復するのは無理がありそうなので遠野駅からタクシーで登山口まで行き、帰りはバスで釜石駅まで行くことにした。久々に時間にゆとりがある計画を立案したのでゆっくりと山歩きができそうだ。
 遠野駅でタクシーに乗り換える。行き先(片羽山)を告げるが案の定分からないようなので笛吹峠を越え青ノ木方面と言うと迷うことなく発車した。乗務員は山菜採りが好きな方で未知の山(片羽山)に興味を持ち気が乗っている。乗務員は運転しながら遠野観光ガイドマップを調べていたが片羽山は掲載されていないらしい。笛吹峠を越えるとカーブの連続する下りとなる。途中から道幅が広くなり直線的な道路となる。橋野高炉跡の標識を過ぎ周りの風景と地形図を見比べながら登山口入口を見落とさないように進む。車道南側に並行して青ノ木川が流れているが流路が変わる地点に青ノ木川に架かる橋がある。その橋のたもとに片羽山入口を示す緑色の標柱が立っていた。標柱は無いだろうと思っていたのでほっとした。右折し未舗装の細道に入る。悪路で車内は大きく揺れるがタクシーは躊躇無く進む。本当にこの道なのかと思ったが迷いそうな分岐点やカーブに片羽山方向を示すプレートがあったので助かった。間もなく鳥居のある登山口に到着した。乗務員は「よしわかった、覚えたぞ」と言い感激していた。「カップラーメン持っていかないか」と言われたがコンロは持参してこなかったので遠慮した。(遠野まるきタクシー、料金\5,380)。
 登山口に登山者名簿入れの木箱があるが開け方が分からない。あきらめて鳥居をくぐりヤマボウシ、ガマズミが咲く登山道を上り始める。文献※1に記載通り最初は作業道を利用した道で道幅が広く快適なコースである。大きなプレートに一合目、二合目・・・の表示がある。ミズナラ、ホオノキ、ウリハダカエデ、ダケカンバ、ミズキ、ブナ、アズキナシ、トチノキ、アカシデなど里山の代表的な樹木が並ぶ。
 四合目から登山道の中央に堂々とマルバダケブキが咲く。五合目はダケカンバ、シナノキの平坦な明るい林で休憩に適する。ここから先は道幅が狭く勾配がきつくなり本格的な登山道となる。六合目でブナの大木の脇を過ぎるとズダヤクシュ、ユキザサ、タニギキョウ、エゾタツナミソウの花が見られモミジガサが沿道を埋めるように葉を広げている。七合目は背丈程のササが茂っているが刈払いされていて進行の支障になるほどではなかった。一旦鞍部に下ると正面に山頂が見えてくる。八合目にはアオハダの花が咲き、九合目で満開のハクサンシャクナゲが現れた。意外にも高山植物が豊富な山で山頂に近づくにつれ期待が高まる。
 木々が矮小化し露岩が多くなる。マルバシモツケの最初の花を過ぎると山頂域のお花畑に達した。マルバシモツケ、アカミノイヌツゲ、コメバツガザクラ(コケモモだったかも知れない)、ハナヒリノキ、ナナカマド、ダケカンバ、ゴゼンタチバナ、ミヤマヤナギ、ハクサンシャクナゲが地面を這うように群生している。雄岳山頂には三角点、その後方に小祠がある。薄くガスがかかっているので遠望は無いが西面の笛吹牧場と南面の雌岳はよく見える。雌岳やその他の方面への登山道は見当たらない。登山客は小生のみ。山頂の岩礫地にビニールござを敷き昼寝をした。
 予定より少し早いが下山(往路を引き返す)を開始する。登山口で登山者名簿入れの木箱を何とか開けられないか試行錯誤する。前面の板を右方向にスライドすると難なく開いた。思いも寄らない構造だった。名簿を見ると県内の方がよく訪れているようだ。小生も記帳する。木箱の下には以下のメッセージが記されている。

片葉山に登られる方へ
 橋野町民と橋野にゆかりのある者にとって片葉山は「心のふるさと」とでも言えるべき存在です。私たちはささやかな登山会を行うなど少しでもこの山に親しもうと努めてきました・・・。

 林道を能舟木・中村集落方面に進む。沿道にヤマブキショウマ、サワギク、ウツボグサが咲く。途中から幅員の狭い舗装道に変わり能舟木集落を通過する。右手に並行して流れる能舟木川沿いの空き地にベンチがあったので給水休憩。ありがたい場所だ。その先の川沿いのガードレールに遠野物語拾遺三二・熊野神社と太刀洗川と記された標識があった。ここで遠野物語ゆかりの地に遭遇するとはうれしい。車道を隔てて反対側に熊野神社に上る石段がある。神社まで上り参拝した。
 県道35号に出るとその交差点角に中村バス停があり既にバスは待機していた。その隣に雑貨屋がある。自販機で冷たいジュースを買ってからバスに乗車した。山菜採り好きな運転手が話しかけてきた。「山歩きか」「はぁそうです、片羽山です」「へぇ、どこにある山か」「この先の道を入ったところですが、こっちよりも青ノ木から行った方が早いです」「花は何かあったか」「シャクナゲがちょうど見頃でした」という出だしで始まりそのうち地元の方も乗車してきたので発車まで話が尽きなくなった。
 橋野川の鮎釣りや三陸海岸の車窓の風景を楽しみ釜石駅前でバスを下車。JRへの乗り継ぎ時間は5分しかない。ダメもとで駅前広場を走って改札をくぐったら間に合った。単なるピークハンター的な山歩きを想定していたのだが予想以上の高山植物、遠野物語関連、地元の人々との情報交換など得られるものが多く初夏のいい思い出となった。

参考文献
※1「新・分県登山ガイド2 岩手県の山」藤原直美著 山と渓谷社2006年6月発行


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