北大鉢森山(きたおおはちもりやま)
岩手県奥州市江刺区
標高627m
岩手県交通バス水沢駅通りから大平線に乗車、山沢下車
【写真】大鉢森山から北大鉢森山を望む
2012年4月1日
 840 山沢(林道入口)
 922 No.14鉄塔入口
 956 大鉢森林道分岐
1044 大鉢森山
1105 防火帯北端終点
1112 江刺区・大東町境界の笹原
1122〜1150 北大鉢森山
1209 503m標高点
1228 480mピーク
1236 送電線巡視路丁字路
1241 No.15鉄塔(425m標高点)
1256 大鉢森山林道に出る
1307 No.14鉄塔直下
1312 No.14鉄塔入口
1352 山沢(林道入口)

 北大鉢森山は小生の自宅から東の山並みを見た場合最も高く見える山だ。しかし未踏峰である。昨年の12月17日、その北大鉢森山を目指し県道179号の山沢集落から水沢区・江刺区境界線上を通る林道を歩き始めた。天候は小雪。水沢区の平野部での積雪は10〜15cm位だったが林道の積雪も同程度で歩行に支障は無さそうだ。文献※1によれば北大鉢森山は藪深く展望が全く無い山とあるのでこの日のような天気が良くない日(視界が悪い日)に登っても元々景色は期待していないのだから落胆することはないだろう。時折立ち止まって写真撮りなどせずに歩くことに没頭するのもたまには良いと思う。この日予定していたルートは林道→防火帯→大鉢森山→防火帯→北大鉢森山。大鉢森山までは既知なのでそこから北に続く防火帯が北大鉢森山直下まで伸びていれば藪が濃くても容易に到達できるだろうと考えた。
 送電線(早池峰幹線)の下を過ぎた所から林道上では重機での間伐作業が行われていた。徒歩で訪れた小生はちょっと作業を中断してもらい難なく通過した。その先は踏み跡のない雪上を歩き大鉢森山に到達。積雪は平野部と大差ない。さらに防火帯上を北上する。以前大鉢森山に登頂したとき数台のオフロードバイクがこの防火帯上を往き来していたので防火帯の終点はどこかの林道に繋がっていると思っていた。岩伏部〜大鉢森山の防火帯は激しいアップダウンが続くのに比べ大鉢森山〜北大鉢森山の防火帯は平坦で歩きやすい。果たして防火帯の終点(北端)に到達した。だが接続があると思っていた林道は見当たらない。ただし笹藪の中に赤テープが見える。葉の上に雪が乗った笹藪は手強そうだが思い切って突入する。
 ササの高さは胸くらい。まず前方に小ピークがあるのでそこを目指す。岩の多い尾根を登っていく。この小ピークは水沢区・江刺区・大東町の境界(地形図上で標高約600m)である。間近に北大鉢森山が見えるはずだが降雪で視界はない。東側に笹原が拡がり赤テープの目印が続いているのが見える。そこで笹原を真東に進んでみる。緩斜面を笹をかき分け進んでいくとそのピーク点らしき所にコンクリート製の標柱(県行林と刻まれている)があった。これは赤ペンキで塗られているので目立つ。目的地の北大鉢森山はこの真北にあるはずだがカラマツの樹幹越しにその影すらみえない。試しに薄暗いカラマツ林の中を進んでみるとササと蔓で容易には進めない上に谷に落ち込んでいるように感じた。天候と日没を考慮しこの日はこれで打ち切りにし引き返すことにした。衣服が凍り付き、ペットボトルの水も一部氷結している。幸い携帯ガスコンロで湯を沸かすことができたが小生の貧弱な装備ではこの辺が限界だろう。
 その後、再訪の機会を伺っていたが平野部の雪解けが終わった4月1日に自宅から自転車で出かける。コースは前回と同様で県道179号の山沢集落から林道に入る。自転車を林道入り口付近に置き歩き始めた。林道での間伐作業は継続中だがこの日は日曜日のせいか人はおらず作業自体も休みのようだ。ここから先の林道は除雪されていない。一気に雪が深くなったので持参してきたわかんを履く。雪上には無数の動物の足跡が残っている。大型のカモシカの足跡は雪中に深い穴を明けている。スギ人工林に覆われた単調な植生でも意外に多くの野生動物が生息していることがわかる。
 林道から防火帯の急斜面を登り大鉢森山山頂に到達した。本日は視界抜群で西面の北上平野と焼石連峰の展望が素晴らしい。北面は稜線上に防火帯が続く。その先に北大鉢森山のピークが確認できた。さらにその背景に残雪を抱いた早池峰山が見える。防火帯は急勾配部で所々地面が露出しているがわかんを履いているので雪上を選んで進んだ。やがて防火帯終点(北端)に到達。北大鉢森山は近くに見えるので本日は迷うことは無いだろう。これならまっすぐ頂点を目指すことも可能だ。しかし本日は先回通ったコースを通ってみることにした。一面に拡がっていた笹藪は今は雪原に変わっている。緩斜面を登り見覚えのある県行林の標石に着く。地形図上ではここから北に続く尾根を進むと北大鉢森山に至る。まぁ地図を確認しなくでもその方向に北大鉢森山が見えているのだが。
 コンパスをセットしカラマツ林の中を下り鞍部に出た。驚いたことにこの鞍部まで林道が続いている(本日は雪に埋もれている。後日訪れたところ笹が茂り車は通行不能。尚、この林道は地形図にも記されている)。この林道は江刺区根木町から延びている大鉢森山林道の枝道で文献※1ではこの林道途上に車を止め北大鉢森山に直登したとある。山頂まで明瞭な尾根を登る。赤テープと県行林の標石もいい目印となる。山頂はどれほどの藪なのか。しかし山頂に近くなると林層が薄くなり明るい日が射し込んでくる。そして山頂には高さ2m位の木製角材の標柱が立っていた。標柱の真下に県行林の標石がある。標柱には境界標の赤いプレートが付けられている。山名を示すプレートは見当たらないがここが北大鉢森山に間違いない。山頂周辺の木は伐採されていて見通しが良い。西面は数本の高木があるが枝越しに見える北上平野の展望は充分だ。西南方向の前沢方面は遮る物が無く一望が開ける。また北東方向に根木町集落が見える。樹木はアカマツ、カラマツ、伐採跡地の低木はリョウブ、クロモジ、ノリウツギ、タラノキ。尚、後日登頂したとき四等三角点も発見した。
 下山は同じコースを引き返す予定だったが北大鉢森山からさらに北に続く尾根は残雪で歩きやすいように見えた。目印となる大鉢森山林道や早池峰幹線の送電線もはっきりと確認できるので道迷いの心配は無さそうだ。山頂付近は樹木が密集し通過困難と思ったがその先は雪上を急降下。麓の太田代小学校/田原中学校が良く見える。左手の谷からは雪解け水で水量を増した沢の轟音が響く。503m標高点から西面を見ると岩伏部の立派な山容が見えた。振り返ると北大鉢森山の偉容が聳える。最初のうちは伐採跡の二次林で細木が多かったがこの辺からアカマツやミズナラの太い木も見かけるようになる。
 鞍部から標高約480mピークに登り返す。残雪が途切れ地面の露出部が多くなった。歩きづらくなったのでわかんを脱ぐ。ピークを少し下ると送電線(早池峰幹線)の巡視路を示す道標があった。直進はNO.15鉄塔、左折はNO.14鉄塔、後進はNO.16鉄塔と矢印で示されている。NO.15鉄塔はすぐ前方に見える。ここでは尾根上を直進しNO.15鉄塔に進んだ(NO.14鉄塔に進んだ方が近道である)。NO.15鉄塔まで来るとその直下に大鉢森山林道が通っているのが見える。本日の山歩きもそろそろ終わりに近いと思うとほっとする。あくまで尾根を忠実にたどって下る。ややうねりながら続いている窪みはかつての道だろうか。最後は大鉢森山林道に合流した。
 林道で左折する。20cmほどの積雪がある。そのまま林道を進むと林道左脇の法面直上にNO.14鉄塔がある。この先林道は大きく迂回している。ショートカットするため林道右手から分岐するNO.14鉄塔用の巡視路に入る。急斜面を下ると往路で通った間伐作業現場に出た。往路と同じ水沢区・江刺区境界上の林道を進み自転車を回収し帰路に着いた。
 よく知られている大鉢森山の登山コースは水沢区・江刺区境界上の林道〜防火帯〜大鉢森山である。しかし今回北大鉢森山にも比較的容易に登頂できることがわかりアプローチの選択肢が拡がった。道標が整備されれば県南地区屈指のハイキングコースになるのではないか。この山域の魅力を箇条書きで挙げると
  1. 北大鉢森山〜大鉢森山間の尾根は防火帯で繋がっていて北上平野の展望が良い。
  2. NO.14鉄塔巡視路を起点として大鉢森山〜北大鉢森山を経由し再びNO.14鉄塔巡視路に戻るという周回コースが設定できる。
  3. 大鉢森山〜正法寺(曹洞宗古刹、国指定重文)のコースもある。下山後、正法寺での休憩が良い(拝観料大人300円)。
  4. 北大鉢森山には三角点がある。三角点の探索好きな方ならGPSやコンパスを頼りにちょっとした探検気分が楽しめる。
  5. 大師山岩伏部早池峰山・網代滝・龍門の滝が近いので立ち寄るのもよい。
コース略図はこちら
参考文献
※1「再発見 胆江地方から見える山々」及川慶志著 胆江日々新聞社2000年4月発行

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