万寿山
万寿山山頂アンテナ小屋 岩手県花巻市
標高410m
JR東北線花巻駅から岩手県交通バス台温泉行きに乗車し終点下車
【写真】万寿山山頂アンテナ小屋
2012年8月4日
 808 JR水沢(JR乗車)
 835~915 JR花巻(バス乗換)
 937 台温泉バス停
1100 台温泉1.2k,展望地0.5k地点
1113 374mピーク付近
1124 鉄塔、万寿山分岐
1145 No.89鉄塔
1150 万寿山山頂
1202 No.89鉄塔
1225~1312 台温泉バス停(バス乗車)
1337~1353 JR花巻(JR乗換)
1419 JR水沢

 以前、東北自然歩道「いで湯と滝のみち」を完歩したことがある。このとき自然歩道の案内板地図に万寿山が記されていることに気づいた。縁起の良さそうな山名である。山頂は自然歩道のコースから外れているがちょっと寄り道程度で登頂できる位置にある。しかしこの日は万寿山方面を示す道標を見つけることができず、分岐点にも気づかず通過してしまった。万寿山については低山だし展望もないヤブ山だろうという先入観を抱いていたので登頂できなくてもまったく気にならなかった。しかし自然歩道のコースは予想外に春の山野草が見頃で雰囲気のいい山だと思った。後日、万寿山は春の花の山として知名度が高いことを知る。やはりそうだったのか、もっとじっくり観察して写真を撮っておくべきだったと後悔した。今年5月に再訪する予定を立てたが実現せず。盆前にやり残したことを片付けてしまわねばと思いようやく万寿山を目指すことになった。
 真夏の低山は暑いだけでめぼしいものは無さそうだが、万寿山はどうなのだろう。小生の観察眼のレベルでも何か得るものがあればと期待した。台温泉バス停で下車。温泉街はまだ閑散としている。日帰り入浴可能な旅館は玄関が開いていて気軽に入れそうだ。やまゆりの宿の敷地内を通過し林道に入る。オオハンゴンソウ、オカトラノオ、キツネノボタン。夏のヤブを構成する定番の草が茂る。林道を離れハイキングコースの細道を登っていくと植生は一変した。ノギランが沿道に咲く。これだけでも来た甲斐があった。直径10cm台の細いアカマツ主体の山でスギが少し混じる。道は南に伸びる尾根上を通っている。展望は左手(東)に谷、その向こうに万寿山の本体を望む。全体的に薄暗く湿気が多い。雨も時々パラパラと降る。
 マイヅルソウ(実)、ツクバネソウ、ホツツジ(つぼみ)、オクモミジハグマ(つぼみ)、ヤマツツジ、クロモジ、タカノツメ、サンショウ、ナツハゼ、アオハダ、リョウブ(花)、ゴマナ(花)、アオヤギソウ(花)、ツクバネウツギ、ウラジロノキ、アズキナシ、エゾユズリハ。特にツクバネが多く尖端に4枚のプロペラ状の花を付けている。高木広葉樹ではミズナラ、ヤマモミジ、ウリハダカエデ。標高が低いのにブナも多い。イヌブナかも知れないと思ったが予備知識の不足で区別がつかない。あとで図書館で図鑑を読んだ時のメモ書きを見ると台温泉はイヌブナ自生地とある。すっかり忘れていた。県内陸部でイヌブナ自生地は、一関の自鏡山、台温泉、一戸町・葛巻町のイヌブナ北限地に限定されるとのこと。イヌブナ探訪のためもう一度台温泉に来るしかなさそうだ。
 438mと374mのピークを東西に結ぶ稜線に近くなるとヤマブキショウマ、ヤマユリ、クルマユリ、ヤマジノホトトギスが開花中。稜線に出ると心地よい風が吹く。東北自然歩道の道標(台温泉1.2km,展望地0.5km)が立つ。道標で左折、稜線を登る。日当たりが良いので草が茂り(ヤマユリ・クルマユリも含む)それらをかきわけながら進む。374mピークの少し南が東北自然歩道の最高標高点でその先は下りとなる。374mピークがもしかして万寿山と呼ばれているのかも知れないと思い自然歩道脇に立つアカマツ大木から森の中に入っていく。木々に目印の赤テープが付けられているのでそのままたどっていけば山頂に着くのではないかと思った。間もなく最高標高点らしき所に到達した。特に標識は見当たらない。
 持参した地図を見ると北側に見えるひときわ大きな山塊がどうやら万寿山のようだ。しかし374mピークと万寿山の間に深い谷があり見るからに直行するのは無理だ。この様子では一旦平塚・花巻交流の森に下り登山道を探すことになりそうだ。自然歩道を平塚・花巻交流の森方面に下る。すぐに送電線の鉄塔直下に出る。送電線の下の樹木は伐採されているので万寿山がよく見える。しかし伐採跡地は下草が濃く歩行は困難だ。がっかりしてそれでも気を取り直し下ることにする。
 すぐに「盛岡線89、91」の送電線巡視路のプレートがあった。送電線は万寿山の西面を掠めている。巡視路を進めば山頂の至近距離まで到達できると考えた。巡視路は東北自然歩道から北に分岐している。分岐点のまわりをよく見ると古い道標も残っている。万寿山経由台温泉と記されていた。鬱蒼とした草に被われた東北自然歩道に比べると巡視路は道幅が広く歩きやすい。最初のうちはノギラン、ヤマジノホトトギスが咲く。その後目立った草花が無くなり見るべきものがなくなった。その分足取りは速くなった。NO.89鉄塔直下に出る。この場所は露岩だらけで西に傾斜しているので展望が開けている場所だ。リョウブ、ヤマハギ、ヤマユリの花が咲く。
 露岩帯の上端から細道が続いている。再び鬱蒼とした森の中に入る。登山道は時々直角的に右左折するので下山時は道迷いに注意だ。途中から登山道上に電柱が立ち並ぶ。これは山頂にある共同アンテナ小屋に電気を引くためだった。山頂には四等三角点と山頂を示すプレートが樹木の幹に掛かっている(3~4枚もある)。展望は無い。アンテナ小屋の裏にまわり反対側に登山道が続いていないかうろうろしたが見当たらない。廃墟となった旧アンテナ小屋がある。古いケーブルが放置されていて花巻温泉方面に続いていた。
 NO.89鉄塔に戻る。露岩帯の下端北側から台温泉方面に下る道が続いている。こちらの道は急斜面が続く。林床にセリバオウレンの葉が展開していてこの辺一帯が春の花の見どころになるのだろう。つづら折りに下っていくうちにつま先が痛くなってきた。直下に温泉街の建物が見える。登山口近くに山神神社がある。その下に民家があるが登山道は民家の裏庭付近で不明瞭になり不安になる。民家の母屋と庭と物置の間を抜けると温泉街のメイン道路に出そうだが民有地の敷地内を通過するので恐縮する。建物の間を抜けると視界が開けた。砂利道を下るとその出口は台温泉バス停の真向かいの場所で驚いた。
 台温泉バス停でバスを待つ。盛夏の季節なのにここは涼しい。バスに乗車し車窓を眺めていたが花巻温泉から先は酷暑に変わった。花巻温泉周辺は県立自然公園に指定されていることもあってこの地域を訪れる度に発見がある。今後も再訪したい山域である。

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