大森山(おおもりやま)
岩手県奥州市江刺区米里
標高820m
奥州市営バス米里重王堂線中沢入口バス停下車
【写真】山頂主三角点
2011年8月27日
 755 水沢駅前発(県交通バス乗車)
 815〜830 江刺一中前〜江刺総合支所(市営バス乗り換え)
 903 中沢入口バス停
 910 トコトン水車
 919 麓山神社
 933 山大畑分岐
 946 大森山林道入口
1007 林道分岐
1034 人首丸の墓入口
1058〜1104 林道〜送電線鉄塔〜林道峠
1135〜1150 大森山山頂
1210〜1214 林道〜送電線鉄塔〜林道峠
1303〜1330 人首丸の墓入口
1405 大森山林道入口
1430 小里原集落(黄金延命水探索)
1448 旧中沢分校
1514 中沢入口バス停
1535〜1621 人首バス停(市営バス乗車)
1650〜1720 本町〜江刺バスセンター(県交通バス乗り換え)
1742 水沢駅前着

 大森山は内陸南部にある小生の自宅から良く見える山である。不均等な三角形をしていて右側がなだらか、左側がやや急勾配、山頂部は尖って見えて格好いい。いつかは登ってみたいと思い続けているうちに相当な年月が経った。文献※1によると山頂は野芝が拡がり展望も良さそうだ。さらに昨年種山に登ったとき大森山の近くに水車小屋、平家落人伝説、人首丸伝説、銘水などの見どころがあることを知り一層興味が増した。
 江刺総合支所で市営バスを待つ。小生と同様の山歩きの格好をした男性1名もバスを待っている様子だった。この方は貸切バスで種山に行くとのこと。市営バスの方が一足早くバス停にやってきたので別れの挨拶をして米里・重王堂行きのバスに乗り込む。大森山への最寄りのバス停は中沢入口である。米里の中心地の人首集落を過ぎると間もなく中沢入口バス停に到着した。そこには大きな案内板が立っていて、トコトン水車0.5km、麓山神社1.2km、黄金延命水2.5km、人首丸墓碑9.0kmと記されている。下調べでは大森山山頂は人首丸墓碑に近い場所にあることが分かっている。しかし片道9km、往復で20km弱の歩行は残暑の中、距離的にやや遠いと感じる。
 バス停から東に分岐する車道に入っていく。道の右手は川沿いで左手は民家が並ぶ。かやぶき屋根の民家がひときわ目立つが近づいてみたところトコトン水車と呼ばれる水車小屋だった。里山の風景によく合っている。ただしこの時は動いていなかった。ツリフネソウが咲く。旧分校のあるY字路付近に馬小屋があり一頭の馬が小生が通るのを眺めていた。このY字路では右折。黄金延命水はここで左折との標識がある。山大畑集落への分岐では左折する。この分岐には案内板が立ち平家落人伝説について記されている。近くに遺跡もあるようだ。いよいよ民家も無くなり谷間を進む寂しい道となった。スギ林、藪を形成するクズ、車道に突き出るようにカワミドリが咲く。しばらく進むと突然開けた土地に出た。休耕田が多い。その奥に戸中集落がある。
 集落の最後の民家を過ぎると右に(南に)大森山林道が分岐する。林道の入口には通行禁止の標識があるがバリケードは無い。荒廃した林道だとこの先の苦戦は必死だ。不安な気持ちで林道を進む。幸いこの日小生が歩いた範囲では沿道の草刈りもされていて車両の通行は全く問題ない状態だった。林道入口から1.5kmほどの地点で左に分岐する道があるがロープで閉鎖されていた。この道には背丈の高い草が茂っていて悪路に違いない。予定ではこの道に入って大森山を目指すつもりだった(文献※1のルートである)が難しいと判断した。ここでは直進し道の状態が良好な林道を南下する。途中の適当な場所から山に入り大森山山頂に到達したい。その適当な場所を探しながら進む。右手の樹幹越しに牧草地が見える。しばらくして林道は峠を越え緩斜面を下る。この時は引き返して峠から尾根に登るか、または先に進んで山本集落からの林道と交差する場所まで行くのか迷っていた。本日は敗退の可能性が濃厚となってきたのでダラダラと歩く。
 ふと道端に目を向けると草むらの中に標柱があるのに気づいた。剥げかけた白ペンキの下地に黒色で「人首丸墓石入口」と文字が書かれている。入口と言っても藪で覆われているので標柱に気づかなければ通り過ぎてしまうだろう。やっと大森山への手がかりを見つけほっとすると同時に未整備の道らしいのでこの先も苦戦しそうだ。まぁ、ここまで来たからには行くしかないのだが。
 クズの蔓を払いのけ山道に入る。続いてサンショウのトゲが進行を阻む。しかし道は続いている。薄暗いスギ林の中を登っていく。ノブキ、ヨブスマソウ、シダ類、ヌスビトハギ、フジカンゾウ、ミヤマイラクサ、キバナアキギリ、ソバナ。しばらく進むと右手は谷に落ち込みその下部に小沢が流れる。路上に倒木や、ミツバウツギ、ウリノキ、アブラチャンが生長しているがおおむね道ははっきりしている。登るに従い小沢と道の高低差が少なくなりやがて沢と道が合流する。露岩帯となり道は判然としない。シダ類が繁茂する露岩の間をちょろちょろと水が流れている。歩きにくいコースなので左の山側に迂回路があるかも知れないと思ったが見当たらない。そうこうするうちに左右に横断する作業道に出た。この道には赤テープも続いている。ここで右に進むとすぐに伐採跡地に出た。作業道を離れこの伐採跡地を直登すると再びスギ林に入ったが間もなく林道に出た。この林道は当初予定していたコースの林道で大森山の直下を通っている。ここまで来てだいぶ心配の種が減った。
 林道に出てからしばらく辺りをうろつくが人首丸墓石は見当たらない(もっと林道を北に行った地点にあるようだ)。墓石の探索は中断し林道を南に進む。次第に高度を増し峠に達した。フシグロセンノウが咲く。峠の直下に送電線の鉄塔が立つ。よく見ると峠から荒れた林道が分岐している。この荒れた林道から大森山山頂を目指すことにした。すぐに猛烈な藪で道を進むのが困難になったので山に入る。山と言っても一帯は平坦なカラマツ林だ。林を横断すると別の作業道に出たので左に進んでみたがこちらもすぐに藪で進行が困難となる。作業道はあきらめ腰の高さ位のササ原の中を進む。全く平坦な地形なので進行方向はコンパスが頼りだ。高木で光線が遮られているのでササ原は薄暗い。このササ原はどこまで続くのかと思っていたら前方に大岩が積み重なっているのが見えた。あれがひょっとすると人首丸の岩窟か。しかしその標識は見当たらない。大岩の上に登ると灌木帯になり山頂域に達したような気がした。
 そろそろ山頂が現れるのではと期待が高まり足も速まる。灌木を払いのけながら尾根筋の標高が高い方へ進んでいくがなかなか山頂は現れない。遠くにスギの高木が見えるがそちらの方がわずかに標高が高い。この分だとまだまだ時間がかかりそうだ。右手に緑の絨毯を敷いたような種山牧場が見える。不意に灌木帯を抜け草地広場に出た。ハンゴンソウを主体とする背丈の高い草が拡がる。この草地に突入すると藪に阻まれ一歩進むのさえ困難な状況になった。もがきながら脇の灌木帯に逃れ藪が薄くなったところを狙って再び尾根に戻った。こうなると帰路が心配だがその悩みは先送りし上を目指して進む。灌木の密度は濃くなり直線的に進めない。右往左往を繰り返す。再び草地広場に出た。空が広い。今度は本当の山頂域に違いない。入口付近はひどい藪だが中は膝丈程度の草が拡がる。ワラビも多い。かなり広い草原なので山頂はすぐに見つからないと思った。まずは草原の右端(東端)まで進んでみた。最後の部分の草地は幅2m位の道になっていたがその最先端部に主三角点の石柱が立っていた。その下に「大森山 標高820メートル」と記したプレートが伏せてあるのも発見した。長年の目標が達成できたのは感慨深い。
 国土地理院の三角点はすぐには見つからなかった。少し休憩してから周囲の草を払って探すと主三角点のすぐ隣に見つかった。レンゲツツジとホオノキの下に隠れていたのだった。山頂の北、西、東方向ははミズナラとアカマツで囲まれ道は無い。展望は三角点からは無いが草地広場の中心部から西面が良好で奥州市の全貌を見渡すことができる。直下の送電線鉄塔(登山口の林道の峠にあった鉄塔)が障害となっているのがやや残念だ。山頂草原は100人規模の登山者が休憩しても余裕の広さがある。
 下山コースは藪の濃い尾根を避け尾根の西側斜面を横断し登山口の林道の峠を目指すことにした。地形図、直下の鉄塔、コンパスで針路を定め下山を開始する。この時草原の中に道があるのが分かった。樹林帯の中に入ると腰の高さのササ原になるが特に進行の障害にはならなかった。ただし足下が見えないので岩に躓くことがあった。大岩が点在する。林道に出てから再度人首丸墓石を探すが見つからない。復路は往路と同じ人首丸墓石コースを下ることにした。この辺りが墓石コースの下山口だったと思って下りはじめたがどうも雰囲気が異なる。引き返している途中でレンゲショウマの花に遇う。レンゲショウマの北限は小生の所有している図鑑では福島県、最近の調査では岩手県遠野のようだが大森山のそれも北限に近い。小生にとって衝撃的な発見だった。
 その後はやや迷いながらも墓石コースを下り大森山林道に出た。時間に余裕があるので林道脇の木陰で昼寝する。全く車両の通行はない。さらに黄金延命水に寄り道をしてみたがどうも場所がわからずに通り過ぎてしまった。後日、地元の新聞に黄金延命水の記事が載っていて民家の庭先にあるとのことである。中沢入口バス停に着くがまだ時間に余裕があるので人首城跡の公園まで歩き本日の山歩きを終えた。次回訪問時は人首丸墓石や大森神社を見て歩きたいと思っている。

参考文献
※1「再発見 胆江地方から見える山々」及川慶志著 胆江日々新聞社2000年4月発行

inserted by FC2 system