近郊自然歩道 大志田・中津川コース

岩手県盛岡市
JR山田線大志田駅・浅岸駅

【写真】米内川沿いのコース

2009年4月12日
 808 JR水沢
 913〜940 JR盛岡→JRバスに乗換
1020 大志田口バス停
1147 米内川沿いの遊歩道に出る
1200〜1210 JR大志田
1308 第一浅岸トンネル
1330 源衛門橋を渡る
1410 上大志田橋を渡る
1450 中津川に沿いに出る
1550〜1729 JR浅岸
1924 JR水沢

 鉄道ファンの間では秘境駅がブームになっているらしい。岩手県内でも連休中の臨時列車として秘境駅号が盛岡〜岩泉間で運行されている。格付け方法はいろいろあるようだが秘境駅ランキングの常に上位にあるのがJR山田線の大志田駅と浅岸駅である。以前から興味があったのだがこれらの駅を訪れるのは列車発着本数が少ないことやその時間が早朝や夜に限られていることから困難であり実行できないでいた(だからこそ秘境駅なのだが)。
 ある日、文献※1をながめていると大志田駅〜浅岸駅の間に遊歩道があることを知る。そこでハイキングと秘境駅探訪を兼ね実現可能な計画を立ててみた。第1案は106急行飛鳥バス停または区界高原バス停→浅岸駅→大志田駅。この案はバス停から浅岸駅まで歩行距離があるが国道106号に浅岸駅左折の道標があるので道路状況は心配なさそうだ。またバスの便が多いので時間的な制約は少ない。第2案はJRバス岩泉行きの大志田口バス停→大志田駅→浅岸駅である。この案はバス停から大志田駅までの歩行距離は第1案より短い。バス停は名称からして大志田の玄関口に相当し大志田に往き来する人が利用するのではないかと予想した。また浅岸駅は大志田駅に比べ列車停車本数が多いので帰路に利用するのが便利である。今回は第2案に決めた。
 盛岡駅前から岩泉行きJRバスに乗車。事前に自動券売機で切符を購入しようと思ったが大志田口の表示がない。下車するバス停が大志田口でよいのかという疑問もあるのでバス車内で精算する方がよさそうだ。バスは国道455号を進みやがて車窓から外山ダム湖が見えてくる。道路脇には雪が残っている。そろそろ大志田口なので地図と風景を見比べながら降車の準備をする。事前に予想したとおり大志田口は外山ダム湖の東端だった。下車後国道を横断、南に延びる未舗装道が大志田へ続く道であろう。大志田口バス停にはバス停のポールは見当たらない。冬期間は撤去されるのだろうか。これも秘境駅への入口にふさわしいのかも知れないがこの先の不安が増大する。(2009年6月14日に同路線バスに乗車した。大志田口バス停はダム湖東端から100mほど盛岡寄りにあった。)
 南に延びる未舗装道を進む。周囲はカラマツ造林地で所々に残雪がある。国道からしばらくは道幅が広いが雪解けの水たまりが多い。次第にササが道の両側に茂り車両一台がやっと通れる程の幅になる。大志田への玄関口に通じる道としては心細い(小生の予想は外れた)。この道に並行して送電線が通っているのでその監視道路と思われる。砂利は敷かれていないしこの先落石や路肩の崩落箇所があるので一般車は通行不能だが徒歩なら全く問題ない。しばらく平坦な道が続いた後、送電線と分かれ、館沢に沿った谷を下る道となる。沢沿いにはケヤキが多い。前方に山田線の鉄橋が見えてくる。
 林道(大志田遊歩道)に突き当たるので右折(西に向かう)し遊歩道起点の大志田駅に向かう。すぐに館沢に架かる橋を渡る。右手にトンネルがあるが山田線の下を館沢がトンネルで通過している。左手で館沢は米内川と合流する。
 大志田駅のホームに座って昼食休憩。秘境駅と言うものの近くに民家が数件あり畑仕事をしている人、山菜採りをしている人、渓流釣りをしている人、駅見物に訪れた親子連れがいて意外にも賑わいがある。駅南側の土手にフクジュソウが咲く。駅舎などの写真を撮った後出発する。駅近くに遊歩道の起点を示す道標「1 大志田・中津川コース」が立つ。駅に通じる未舗装道を下ると米内川沿いの林道に出る。この場所にコースの地図入り案内板がある。林道入口のゲートは閉じていて4/24まで冬季積雪のため通行止めとの事。と言うことは現在は歩行者専用道であり通過車両に神経を使う必要がないのは助かる。一方、依然として寂しい林道歩きが続くことになる。
 先ほど通った館沢まで引き返す。付近はサワラの植林地である。川沿いはサワグルミが多い。さらに東に向かって米内川沿いの林道を進む(林道は源衛門橋まで未舗装)。道標「2 大志田・中津川コース」の周りにカタクリが群生しているが花は散りはじめ。その先、日当たりの良い道路脇の斜面にキクザキイチリンソウ、アズマイチゲが咲く。しばらくこれらの花を楽しみながら歩く。山田線の鉄橋下を2度通過し、線路のトンネル上(地形図で第一浅岸トンネルと記載されている地点)を通過後は今まで並行してきた線路と分かれる。沿道はカラマツ、アカマツ、スギが多い。
 源衛門橋で道は二手に分かれる。左は通行止め、右が遊歩道でここから舗装道に変わる。日の当たらない道路上にはまだ雪がある。前方の標高が高い所にガードレールが見えるがその道はこれから自分が上って行く道だった。上大志田橋では道標に従い右折。ここから米内川と分かれ上り坂となる。峠を越し芦ヶ沢に沿った谷間を進む。丁字路に突き当たるので左折。この場所にコースの地図入り案内板と盛農同窓林の石碑がある。
 中津川に沿って道は続く。山田線も並行する。中津川沿いの道は舗装道だが小生が歩いている間の通過車両は無し。道端に咲くキクザキイチリンソウ、近くで元気に鳴くシジュウカラ。道標「9 大志田・中津川コース」で大志田駅以来の初めての民家が現れる。浅岸駅付近にも民家が数件と旧小学校の建物がある。道標に従い丁字路で左折。橋を渡る。ここに釣り人1名。駅までの未舗装道を進む。道脇に以前のホームの石組みが残っていた。
 浅岸駅に到着。車が1台駅まで来たがすぐ引き返していった。その後は全く静かな駅だった。列車が来るまで駅で時間を過ごす。ホームに仰向けになってしばらく空を眺めた。早春の自然の中、日々の雑事がここでは瑣末に思えてくる。日が傾き西の山に沈み薄暗くなった。駅舎の中に入り雑記帳に記帳する。
 夕闇の中、ヘッドランプを点灯した列車が近づいてきた時はなぜか感動した。貴重な思い出を秘境駅に残し、非日常から日常の世界に戻る。

参考文献
※1「岩手の里山を歩く」大坊孝男著 岩手日報社出版部2004年4月発行


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