仙人山
岩手県北上市
標高882.2m
JR北上線和賀仙人駅・岩沢駅
【写真】久那斗神社とカタクリ
2008年4月28日
 710 JR水沢
 804 JR和賀仙人
 834 姥スギ登山口
 922 姥スギ
 926 久那斗神社
 958 706m標高点
1020 展望台
1023 岩沢コース分岐
1034〜1056 山頂
1059 岩沢コース分岐
1155 稲荷抗口分岐
1219 林道出合
1240 山神社
1250 水沢鉱山精錬所跡地
1400〜1451 JR岩沢
1611 JR水沢

 和賀仙人駅で下車。国道107号を西に進むと旧仙人小学校、社宅前バス停などがありかつての鉱山町の名残がある。和賀仙人郵便局を過ぎ和賀川に架かる橋の手前に仙人山や久那斗神社の姥スギの案内板があるので左折する(南に向かう)。工場を左手に進む。通勤時間らしく数台の車両が通行した。車道の突き当たりに姥スギ駐車場という名称がついた登山者用の駐車場がある。ここから右手に続く林道に入るが数分で登山口に着く。周囲にはニリンソウが咲く。しめ縄が張られた大木の脇を通り鳥居をくぐり抜ける。
 しばらく進むとJR北上線の鉄橋の下に出る。小沢を徒渉し階段を上る。ここから久那斗神社までお花畑が連続した。ニリンソウ、キクザキイチリンソウ、オオバキスミレ、ヤマエンゴサク、コミヤマカタバミ、カタクリ、エンレイソウ。途中に石地蔵があり旧街道の名残を感じさせる。標高が高くなるにつれショウジョウバカマも増えてきた。樹木はブナが優勢で新緑がまぶしい。草花の観察や写真撮りに夢中で疲れを感じなかった。
 姥スギの手前に案内板があった。「森の巨人たち100選、No.32和賀仙人の姥スギ、推定樹齢900年、高さ30m、幹周11.5m」とある。姥スギ保護のため姥スギ直下を通る道は避け案内板から左手に入る迂回路を通って欲しいとのことである。周囲にはオオバギボウシが群生しているが少し上の斜面に残雪があり水が豊富なためと思われる。迂回路は久那斗神社の参道に突き当たり終点となる。左折し鳥居をくぐると久那斗神社に着く。久那斗神社は1150年代に藤原秀衡が建立したとのこと。カタクリが群生している。
 神社左手の登山道の道標に従って進む。ここから尾根道となるが強い西風が吹き肌寒い。花もポツリポツリとしか見かけなくなるがブナの木の根本に風を避けるようにしてイワウチワが咲いていた。コヨウラクツツジも咲き始めている。送電線下を通りしばらく進むと706m標高点に着く。このあたりは伐採跡地なので東面の羽山方面の展望が良い。また右手斜め前方に残雪を抱いた仙人山が見える。
 所々登山道に残雪が現れるようになる。登山道は雪の下で不明瞭になるのでコースを外れないように注意して進む。途中展望台と記されたプラスチック製の道標が雪上に落ちているのを発見した。通常はこの場所から北面の展望が良さそうであるが現在は展望の障害となる藪は雪の下になっていてどの場所からでも展望が利くため展望台の有り難みは無い。雪の上にはブナの実がたくさん落ちている。少し進むとブナの木の下に「←仙人山頂、久那斗神社・姥スギ→」と記された道標があった。この場所から南方向に下る細道があり岩沢コースと思われる。帰路は岩沢コースを通る予定である。
 岩沢コース分岐点から山頂までは稜線の雪上を進む。稜線は途中で左にカーブする。ピーク点まで上り詰めると尾根の西側に立つブナの木に山頂を示すプレートが掛けてあった。三角点を探したが見当たらない。まだ雪の下にあるのだろう。山頂からさらに南に続く稜線には残雪が豊富である。稜線の残雪をたどれば夏油高原スキー場まで続いているのかも知れない。
 昼食休憩をしていると天候が悪化し強風にみぞれが混じってきた。早々に引き上げることにする。予定通り岩沢コースに下る。すぐに広大な残雪がある。尾根に比べ日が当たらないせいだろう。残雪の中央をそのまま下っていくが登山道の手掛かりは見つからない。引き返す途中、木に赤色や緑色のペンキで矢印が書かれているのを見つけた。この矢印を頼りに進むが間もなく進退困難な急斜面になり再び引き返す。あきらめきれずもう一度矢印を頼りに進んでみる。次の矢印のある木、またその次の矢印のある木を探しながら少しずつ下っていくうちに残雪が途切れ登山道が見えてくるようになり次第に不安が和らいできた。
 天気は回復し弱い雨に変わりやがて止んだ。新緑のブナが一層輝いて見える。ショウジョウバカマ、イワウチワ、マンサクが咲く。ムラサキヤシオはまだつぼみである。ここで花の撮影をしていたらカメラのフイルムを使い切ってしまった。
 稲荷抗口分岐付近はキクザキイチリンソウの花畑になっている。その先は旧鉱山跡の施設の中を通る道となる。溶鉱炉跡、教会堂跡、石の臼などの標柱があちこちに立っている。道は縦横に巡らされてあり何度も分岐・合流するのでどれが正規の道か不明である。迷路のような鉱山跡を抜け林道に出る。登山口の駐車場に下る細道の入口に道標があるがそちらには入らず林道を直進した。やがて岩沢方面に続く林道と合流した。
 しばらく鉱山関連の施設跡地が続く。元禄時代の供養塔、キリシタン墓石、劇場の跡、学校跡、所長宅跡など。学校跡の向かい側の小高い場所に山神社という神社があったので参拝した。神社参道入口に夏油入畑まで11kmと記された道標がありこの林道はハイキングコースにもなっているようである。神社裏にはムラサキヤシオ、ムシカリが咲く。最大の施設は水沢銅山の精錬所跡で古代の遺跡のような石組みが残っている。案内板によれば最盛期には抗夫600名、住人3000名の規模だったとのこと。
 岩沢駅に向かって林道を進む。沿道にはヒトリシズカ、シラネアオイ、イタヤカエデ、キブシなどの花が咲く。やがてスギの植林地に変わる。林道脇の水たまりにはネコノメソウが咲く。林道の出口にはゲートがあった。土砂崩れの危険があるため車両通行禁止との事。ゲート前に車を止め周囲の山野草採りをしているグループがいた。
 列車の待ち時間に余裕があるので近くにある湿原でミズバショウを見学した。時期的には遅く大半の花は散っていたがいくつかの花は残っていた。ハンノキ林の中の木道を散策する。ショウジョウバカマも咲いていた。

参考文献
※1「新・分県登山ガイド2 岩手県の山」藤原直美著 山と渓谷社2006年6月発行
※2「再発見 胆江地方から見える山々」及川慶志著 胆江日々新聞社2000年4月発行

仙人山(姥スギコース・岩沢コース)
岩手県北上市
標高882.2m
JR北上線和賀仙人駅・岩沢駅
【写真】岩沢コース登山口
2008年5月15日
 710 JR水沢
 804 JR和賀仙人
 837 姥スギ登山口
 935 久那斗神社
1040 岩沢コース分岐
1055〜1140 山頂
1250 岩沢コース分岐
1238 稲荷抗口分岐
1400〜1410 水沢鉱山精錬所跡地
1444 ゲート
1502 JR岩沢
1515〜1549 岩沢バス停
1624〜1655 JR北上
1712 JR水沢
同行K氏

 一昨年に登った仙人山は小生にとって好印象だった。そのため今回の集団登山の行き先を仙人山とし企画立案した。結局小生を含め2名参加。楽しく仙人山を歩くには適度に残雪がある時期に登ることだと思う。今年は例年に比べ低温が続いたので5月の連休明けでもまだ残雪があることを期待した。春先に咲く山野草も落花せずに残っていて欲しい。
 JR北上駅から北上線の列車に乗車する。同行のK氏は道中の食料を和賀仙人で調達するつもりだったが、和賀仙人にはコンビニのような店は無い、相当寂れたところだから無理だと話す。和賀仙人駅で下車し国道107号を西に進む。チェーン着脱場と思われる路肩が広い場所の奥に数台の自販機が置いてある。飲み物を調達するならここしかない。和賀仙人郵便局は既に廃止され廃墟化しつつある。そんな中、登山口にある日本重化学工業の工場は操業していて活気が感じられる。
 ケヤキの大木と鳥居のあるところから本格的な登山道が始まる。右手の小沢が流れる一帯はニリンソウが開花中。この先、久那斗神社までニリンソウの花畑が連続する。オオバキスミレ、ヤマエンゴサク、エゾエンゴサク、ヒトリシズカ、キバナイカリソウ、シラネアオイ、スミレサイシン、タチツボスミレ、オクノカンスゲが見頃。カタクリは散りはじめ。久那斗神社近くにサンカヨウ(つぼみ)が見られた。
 神社に参拝後、尾根上の道を進む。北側の斜面には所々残雪がある。送電線の鉄塔を過ぎると急な登りが続く。イワウチワの群落があるがほとんど花は落ちている。時々左手に展望が開け直下に日本重化学工業の工場設備群が見える。振り返ると錦秋湖を見渡すことができた。高度を上げていくと勾配が緩くなり登山道は残雪に覆われる。一帯はブナ林だがまだ葉は出ていない。残雪の上は歩きやすいが登山道を見失なわないように注意して進む。大体は残雪の右側に登山道が続いている。
 岩沢方面の分岐に着くが岩沢コースに下る道はササで覆われ判然としない。帰路は岩沢コースを通る予定なので不安が残る。その後は山頂まで雪庇の上を進む。東面に北上市街地方面の展望が広がる。山頂三角点は残雪の脇に頭部を出していた。山頂で休憩中に夫婦が登ってきた。
 休憩後、分岐まで戻る。途中男性1名と擦れ違う。分岐から予定通り岩沢コースに下る。ササをかき分けながら進むと踏み跡があり斜面を下っていく。その先は先回と同様広大な残雪地帯である。雪原の上でルート探索を始める。樹木に赤または緑ペンキが目印だ。二人で手分けして探すが先回に比べペンキが薄くなり目立たなくなっている。それでも注意しながら進んでいけば見つけだすのは容易だった。最初の内はリョウブなどの低木が茂り道が判然としないのでペンキが頼りとなる。
 道はつづら折りで高度を下げる。ブナの新緑と背景の雪渓のコントラストが鮮やかだ。コヨウラク、ムラサキヤシオはつぼみである。最後は右手を流れる沢(といっても断崖の下にある)と並行して長く緩い坂を下る。マンサクが道上に覆い被さるように枝を伸ばしているのでその下を抜けると稲荷抗分岐に着く。
 教会堂跡、溶鉱炉後など鉱山の遺構を示すプレートは塩ビ製だがほとんどがポールから抜け落下していた。そのいくつかは元に戻しておいた。登山道をはじめ周囲一面カタクリが群生(見事に開花中)している。キクザキイチリンソウ(紫花)が少し混ざる。採掘時に不要な石を捨てたと思われる場所(第1カラミ平、第2カラミ平)がある。ここに何か珍しい鉱物でもないか探すと小さな水晶があったので記念に持ち帰った。水場と散りはじめのオオヤマザクラを過ぎると林道に出る。
 少し進むと右手に駐車場を示すプレートがあるのでそちらに入る(先回はそのまま林道を直進した)。ガイドブックに記載のコースなので整備されたコースだろうと思ったのだが道は細く急斜面の下りで途中から水力発電所跡の石垣(現在その石がほとんど抜け落ちている)の下を通る。コンクリート製の廃墟化した構造物(大選鉱場跡地)の脇を過ぎ不明瞭な道を進むと直径10m程の丸いコンクリート製の沈殿槽がある。この沈殿槽と城壁のような石垣に挟まれた狭いスペースを擦り抜けると登山口に出た。
 林道を岩沢方面に歩く。山神社参道入口のサクラが満開だ。林道上にはイタヤカエデの花が夥しく落ちている。途中、水沢鉱山跡地で休憩。岩沢駅に着くが一つ前の列車には10分程間に合わなかった。尚、岩沢駅舎内の展示室に水沢鉱山の往時の写真などの展示コーナーが設けられていたが扉に鍵がかかっていて中に入ることができなかった。それでもガラス窓越しにいくつか拝見することはできた。次の列車まで間があるのでバス停まで歩きバスで帰路に着くことにした。岩沢バス停には立派なベンチが2脚もあり登山後の疲れを癒すには充分であった。


inserted by FC2 system