遠島山

岩手県久慈市
標高1252.7m
三陸鉄道久慈駅から市民バス山根線に乗車し堀割バス停下車

【写真】遠島山山頂

2008年7月12日
 808 JR水沢
 913〜935 JR盛岡
1130〜1212 三陸鉄道宮古
1349〜1431 三陸鉄道久慈
1503 堀割バス停
1537 細野入口
1614 内間木入口
1640 内間木洞
1701 二合目
1706 三合目
1717 遠島山荘着

2008年7月13日
 500 遠島山荘発
 505 四合目
 519 五合目
 528 六合目
 540 七合目
 553 八合目
 600 九合目
 603〜630 遠島山山頂
 633 九合目
 640 八合目
 701 六合目
 710 五合目
 720 四合目
 724 遠島山荘入口
 734 三合目
 804 内間木洞
 836 内間木入口
 914 細野入口
 947 堀割バス停
1005〜1303 新山根温泉
1341〜1412 三陸鉄道久慈
1546〜1605 三陸鉄道宮古
1815〜1845 JR盛岡
2021 JR水沢

 県南部から久慈地区にある遠島山の山登りとなると登山そのものよりも交通機関で往復する時間や苦労のほうが負担になってくる。この欠点をカバーするには趣向を凝らし中身のある登山にしたい。いろいろと計画を考えた結果、盛岡−久慈の往復は106急行・三陸鉄道観光フリーパスを利用、遠島山荘で前泊、早朝山頂を目指すことにした。106急行・三陸鉄道観光フリーパスは料金が安い、所要時間は盛岡−久慈直行バスよりかかるが前泊なら時間に余裕がある、ということで使ってみることにした。
 盛岡駅前の県北バス窓口で106急行・三陸鉄道観光フリーパスを購入する。乗車したのはスーパー特急で宮古まで途中停車無しの直行便である。スーパー特急バスは中二階建てで見晴らしは良く静かなのは良いが重心が高いせいかカーブでの揺れに違和感を感じる。初めて106急行に乗車したがほとんど山中のコースで区界峠から先は閉伊川に並行しトンネルが連続する。
 終点の宮古駅前で下車。下車時にスーパー特急料金\200を支払う。三陸鉄道北リアス線に乗り換える。乗車した列車はさんりくトレイン北山崎号で夏季休日に特別に運行されるイベント列車である。この列車は盛岡を発車しJR山田線宮古駅から三陸鉄道北リアス線に乗り入れ終点の久慈に到着する。宮古駅で列車の進行方向が逆転するので席に着く前にシートの方向転換を自分ですることになる。イベント列車だけあって窓が広く車窓の眺めはよい。宮古から普代までトンネルが連続する。途中、田野畑駅で乗客全員に田野畑産の牛乳パックが配布された。普代から団体客が乗車した。普代−久慈間は三陸海岸の展望が良く、特に見晴らしの良い鉄橋の上で列車が停車する。鉄道ファンにとってうれしいサービスである。陸中野田駅付近は水田地帯を走り三陸鉄道らしからぬ風景に驚く。
 終点久慈で下車。隣のJR久慈駅の待合室で市民バスの発車時刻まで待つ。時刻が近づいたので市民バス山根線に乗車したら小型バスの車内はほぼ満席で空いていたのは最後部座席左側のみだった。途中の滝ダムでは海が見えるダムとして有名ですと車内のテープが流れる。バスの運行を委託されている会社はタクシー事業もしておりその電話番号もテープで流れたので万が一のためにメモを取る(52-3333)。次第に乗客が少なくなり小田瀬バス停で一気に3名が下車、乗客は小生だけになる。いつものローカルバスの雰囲気に戻る。
 堀割バス停で下車。近くの十字交差点に内間木洞まつりののぼりが数本立っている。祭りはいつ行われるのか不明だが内間木洞は遠島山の登山口であり下車したバス停は間違っていないようだ。交差点から県道29号を西に進む。葛形沢に沿った道に民家が点在し牛が放牧されている。橋場集落から先は左右の山が迫り渓谷となる。沿線に塩の道・野田街道の標柱が頻繁に現れる。古道をたどるのも悪くはないが立派な県道に置き換わりかつての面影はわずかしか見当たらない。アスファルト上に毛虫がたくさん這っているので踏み潰さないように注意して歩く。
 旧山形村の境界を越えると再び内間木洞まつりののぼりが数本立っている。ここで左折。内間木洞まで一本道であった。内間木洞前の広場には運動会などの行事で使用されるタイプのテントが数基張ってあるが人影はない。祭は終わり撤収前か、明日の祭の準備かどちらかだろう。遠島山への道標に従い未舗装の林道を進む。日が差さず既に薄暗い。途中二合目、三合目の道標がある。沿道にアジサイ、ヤマブキショウマ、ヤマハハコが咲く。水場(特に標識はなかったが文献※1には記載)の入口を過ぎ林道本線から右に分岐する道にはいるとキャンプ場の広場と奥に遠島山荘があった。本日の行程はここまで、何とかたどり着き安堵する。
 山荘の玄関の扉のかんぬきを外し(この時点で中に誰もいないことを知る)中に入る。長らく締め切った室内は埃臭かったので窓を開けしばらく箒で掃き掃除をする。床面の土埃が一掃され快適になった。久しぶりの小屋泊まりなので荷物が重く体力を消耗しているのを感じる。寝具や調理器具を広げながら休憩する。柱に掛けてある寒暖計は26℃を指している。
 夕食を終え午後7時を過ぎると暗くなり始めたので山荘訪問者が記帳した雑記帳を読みながら床につく。窓から標高822.8mのピークが見える。真夜中に目を覚ますと満天の星であった。午前3時頃目が覚めた。明るくなるのを待ち4時に起床。朝食を済ませ身支度をし5時に出発する。林道を進むとすぐに道標がありここで右折する。シラカバ、ミズナラの高木が立ち並び一気に深山の雰囲気となる。ヤマオダマキが咲く草地を過ぎると四合目。ここからブナ林となり斜面一面サンカヨウが群生する(ただし葉が黄変し枯れ始め)。道沿いにカラマツソウ、ミヤマセンキュウが咲く。五合目はブナの大木が多く道沿いにマルバダケブキが咲く。六合目からダケカンバが多くなり道沿いにユキザサ、マイヅルソウ、エゾタツナミソウ、クルマバソウ、ズダヤクシュ、ギンリョウソウ、オクモミジハグマ、ヤグルマソウ、オオカニコウモリが現れた。七合目から周囲の樹木が低くなり朝の日射しが射すようになる。八合目からイチイが点在する。九合目でブナの倒木を越える。そして遂に山頂に達した。三角点のそばに小祠が祀ってある。東面が刈払われているがガスで全く展望が効かない。山頂からさらに南に進むと露岩地に出て南から西面の展望がよい。風車があるのが袖山高原だろうか。その右奥に岩手山、左奥に早池峰山が見える。東側に下る道が続くが道標によれば天神森に至るとのこと。
 しばらく景色を眺めた後下山する。途中男性1名と擦れ違う。内間木洞前に出ると人が大勢いて祭の準備をしている。小中学生も多数でお祭りを待ちわびているようだ。小生は洞窟の入口に入ってみたがとても涼しい。入口奥に小さな神社があるので参拝する。その先は扉があって中に入れない。文献※1によれば洞窟は私有地で公開日は2月とある。今日は洞窟入口の神社の縁日だろう、この地区では大きなお祭りらしいと思った(この考えは浅はかだったことが後に判明した)。2時間くらい待っていれば出店が並びおいしいものが食べられそうだがあきらめ帰路に着くことにした。
 堀割バス停まで戻ると待合室に内間木洞まつりのポスターが貼られていた。見ると何と本日10時から洞窟が公開されるとのこと。かなりの見物客が殺到することが予想される。臨時駐車場を作ったり大勢の人が準備作業をしていたのが納得できた。しかし小生は滅多にないチャンスを逃したことになる。
 堀割バス停前の交差点を南に進み新山根温泉を目指すことにした。トンネルをくぐり右折。長内川の渓流沿いの車道を進み中学校前で右折。間もなく温泉に着いた。この温泉についてほとんど下調べをしていなかったが近代的な建物だった。料金\400を支払い二階の浴場に入る。コインロッカーに荷物が全て収納できたのが良かった。湯に浸かるとすぐに肌がツルツルになった。後で温泉の効能を読むと強アルカリ性の順番で日本国内第三位とのこと。最初はすぐにのぼせたが体が慣れてくると長時間湯につかることができた。特に源泉そのままの水風呂は気持ちが良い。
 温泉内の食堂で昼食を摂り広間で休憩。山根地区の歴史をまとめた本を読みながら過ごす。車道が通ったのは60年前。それ以前は閉ざされた地域であった。生活の糧となる豊富な沢の水の水源は遠島山。ブナ林が重要な役割を果たしている。山根地区では遠島山の自然が日々の生活と直結した。小学校の生徒数が全盛期数百名、過疎化が急激に進行した。
 バスの時刻が近づいたので玄関前に出る。この地方定番のおやきを食べながら久慈駅行きのバスを待つ。
 久慈駅で三陸鉄道に乗り換える。駅でレトロ列車のキーホルダーをおみやげとして購入した。ホームで列車を待っているとやってきたのはレトロ列車を併結した三両編成の列車だった。この列車には普代まで団体客が乗車し賑やかである。再び三陸の海の景色を楽む。尚、途中で記念乗車証が配布された。宮古で106急行バスに乗り換え帰路に着く。

参考文献
※1「新・分県登山ガイド2 岩手県の山」藤原直美著 山と渓谷社2006年6月発行


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