兎森山(うさぎもりやま)

岩手県北上市
標高1054.3m
JR東北線北上駅から岩手県交通夏油温泉行きに乗車し終点夏油温泉下車、または夏油スキー場下車

【写真】兎森山山頂

2009年6月7日
 750 JR水沢
 807〜820 JR北上
 930 夏油温泉
 945 夏油温泉野営場
1105 小沢徒渉(ミズバショウ)
1133 丸子峠
1211 横岳(標高1099m)
1232 展望地点(標高1087m)
1240 スキー場ゴンドラ前
1243 展望台(標高1075m)
1302 兎森山登山口
1314 兎森山
1333 兎森山登山口
1353 ブナ原生林散策道入口
1410〜1455 夏油高原スキー場
1545〜1555 JR北上
1611 JR水沢

 先週西和賀町のマラソン大会に参加した。ろくに練習をしていないのに久々の好記録でまだ底力は残っていた。しかしその反動のせいか今週は体調・足腰が不調。昨日(6/6)は雨だったので一日休養したが回復の程度は少なく完全復調には時間がかかりそうだ。
 当日の早朝も雨。引き続き休養するのも悪くはない。しかし6時を過ぎると雨は止み日射しも出てきた。天気予報通りである。これなら登山に行けそうだ。北上駅前から夏油温泉行きのバスに乗車。終点まで乗客は小生1名。瀬美温泉で時間調整のためしばらく停車するがその間に車内でバスカードを購入。夏油スキー場でもトイレ休憩のためしばらく停車。今日は夏油高原新緑まつりが行われるため臨時バスの運行があるとのこと。バス停に貼ってあった臨時バスの時刻をメモする。この先夏油温泉までの道路(県道122号)は昨年の大地震の影響で片側通行の箇所がある。終点夏油温泉で下車。このバスは約10分後に北上駅行きとして発車するがバス待ちの乗客はなく閑散としている。昨日の荒天が観光客の出足に影響しているのだろう。
 まず夏油温泉野営場を目指し県道122号を夏油スキー場方面に歩き始める。沿道にタニウツギ、ヤマツツジ、ウラジロヨウラクが咲く。車道に並行する夏油川の谷筋にはブナの大木が多い。既に深山の雰囲気である。キンポウゲが咲く野営場駐車場に着く。トイレと使用者記入カード箱の間から丸子峠への登山道が始まる。すぐに沢を横断するのだが昨日の雨で増水し流れが速く徒渉は容易でない。靴を履いたまま膝下まで水に浸かり渡る。炊事場脇を通過すると道が分岐するが道標に従い左折(直進はキャンプ場)。すぐに二つ目の沢を横断する。こちらも同様に膝下まで水に浸かる。
 その後はやや勾配のきつい登りとなる。道はぬかるんでいるが既に二度も水に浸かっているので気にならない。沿道にヤグルマソウ、ズダヤクシュ、ツクバネソウ、チゴユリ、ユキザサが咲く。アジサイはつぼみ。ブナ主体の林でほとんどが幹直径50cm超えの大木である。頭上遙か高いところに枝を広げている。昨日の風雨で路上にたくさんのブナの実が落果している。その他テツカエデ、サワグルミ、トチノキ、路上にノブキが目立つ。
 標高が高くなるにつれムラサキヤシオ、ヒメモチ、ガクウラジロヨウラク、エゾユズリハが見られるようになる。ギンリョウソウの群落、コイワカガミの群落を過ぎる。周囲に残雪がぽつぽつと見られるようになる。ツクバネウツギ、ウワミズザクラ、マイヅルソウ、タムシバ、クロモジ、ムシカリの花が続く。ショウジョウバカマは花期終わり。この辺りで下山者1名と擦れ違った。
 雪解け水に加え昨日の雨で高度を増しても道は湿気が多くぬかるんでいる。露岩の急斜面を登っている途中からミヤマカタバミが多くなる。雨で花は半開き状態である。尾根筋の乾いた道になりぬかるみから脱したと思ったのも束の間で小沢を横断する。小沢に沿って葉が大きくなったミズバショウがびっしりと生える。ここから本コース一番の見所のお花畑が始まった。一帯は遅くまで雪が残るすり鉢状の湿地帯となっていて沿道にツバメオモト、サンカヨウ、ニリンソウ、キクザキイチリンソウ、シラネアオイが咲く。コヨウラクツツジ、ウリハダカエデも開花中。
 お花畑を過ぎ急斜面をジグザグに登る。サワハコベ、ツルシキミが目立つ。登りきると丸子峠に到達した。ブナ林の中で展望はない。峠を示す道標の周りにはズダヤクシュが咲く。峠は変形十字交差点となっているが右折し横岳・夏油スキー場方面に進む。この辺から小雨が降り始めた。露岩の上を登る。本コースの中では最も足場が悪いところだ。しばらくするとサラサドウダン、ハクサンシャクナゲ、ハナヒリノキ、イチイ、マルバシモツケ、アカミノイヌツゲ、ハイマツ、ミネザクラ、コメツツジの低木地帯に入る。そろそろ森林限界を越えそうな雰囲気がしたがその逆で再び樹林帯の中に入る。雨で足下が濡れてきたので合羽を着用する。
 横岳山頂は腰の高さほどのミズナラに覆われている。ミズナラは盛んに花序を垂れている。天気が良ければ周囲の展望が見渡せそうだが今日はガスで白一色の世界である。少し休憩した後、夏油スキー場に向かって北に進む。横岳から先はスキー場周辺のハイキングコースで整備された歩きやすい道になると思っていたが今までと変わりがない。日当たりの良い尾根なので道脇の灌木の小枝が伸びそれらを払いながら進む。このため距離の割には通過時間がかかった。
 一度鞍部に下るがこの一帯は雪どけが遅いようでブナはまだ葉芽の状態、登山道脇にカタクリが咲く。やがて樹林帯から抜け出し展望地点(標高1087m)に到達する。ここからスキー場のゴンドラが間近に見える。今日は新緑まつりのためゴンドラが運行されていてちらほらと家族連れの行楽客が訪れている。しかし小雨で肌寒く展望もないので早々に引き返すしかなさそうだ。ゴンドラの終点直下に残雪がある。
 ゴンドラの終点すぐ北に展望台(標高1075m)がある。その先はハイキングコースが続いているがすぐに作業道(スキー場のゲレンデで幅100程の草地の中を通る)に合流する。ゲレンデの林縁にシラネアオイ、サンカヨウ、ズダヤクシュ、ミヤマカタバミ、キクザキイチリンソウが点々と咲く。気軽に自然観察ができるコースだと思う。ゲレンデのスピーカーから音楽が流れる。
 平坦な作業道を進むと次のゴンドラの終点駅がありここから先は道幅が狭い林道の下りとなる。そろそろ兎森山が近いので登山口を見落とさないよう注意しながら進む。登山口には大きな道標が立っていた。山頂まで10分とある。灌木が茂る細道で所々丸太の階段を登っていく。道端にサンカヨウ、キクザキイチリンソウ、ミヤマカタバミが見られた。山頂はハクサンシャクナゲ、アオダモ、ツクバネウツギの低木で囲まれていて天気が良ければ展望の良い場所であろう。近くの木でウグイスが盛んに鳴き小生を警戒しているようなので下山する。
 登山口まで下山し林道を下る。三つ目のゴンドラの終点駅を過ぎると再びゲレンデの中に入る。正面にどっしりと構えたオガラ森山を見ながら草原の中を下って行く。途中、ブナ原生林散策道入口と記された道標があり左手下方に細道が分岐する。天候とバスの時刻を考え今日は立ち寄らない事にした。間もなくゲレンデは右に直角にカーブする。行く手にスキー場の施設群が見えゴールは近い。
 新緑まつりということで施設内には屋台が並びいろいろなイベントが催されていた。しばらく休憩を兼ねて見学した後、バスに乗車する。往路と異なり車内はほぼ満員でバスは発車した。

参考文献
※1「岩手の里山を歩く」大坊孝男著 岩手日報社出版部2004年4月発行
※2「再発見 胆江地方から見える山々」及川慶志著 胆江日々新聞社2000年4月発行


inserted by FC2 system