矢越山
矢越山山頂 岩手県一関市
標高519.6m
JR大船渡線矢越駅から市営バス両国橋行き矢越郵便局前下車
【写真】ひこばえの森登山口から山頂を望む
2008年3月30日
 632 JR水沢
 655〜720 JR一ノ関
 825 JR矢越
 850 矢越郵便局前
 933 ひこばえの森
 948〜1010 矢越山頂
1030 矢越神社
1053 矢越神社参道入口
1157〜1240 JR矢越
1340〜1437 JR一ノ関
1502 JR水沢

 昨年11月に矢越山登山の計画を立てたのだが冬の季節を越し本日まで延期となった。県の南部で海にも近い矢越山ならこの時期なら雪解けも早く歩きやすそうと思い出かけることにした。
 矢越駅で下車。駅前から市営バスの便があるが時刻にはかなり間がある。駅前通りから国道284号を経由するとやや遠回りになるので線路を越し県道18号に出た。この付近は製材所が多い。小学校前を過ぎしばらくの間は歩道があり歩きやすい。
 矢越郵便局前で左折し橋を渡ると水車がある。この地区の方々が手作りで製作したものらしい。家族連れが見学していた。カーブが続く車道を上っていく。炭焼き小屋、水神様、大きなトチノキなどの案内板が沿線に点在する。あちこちでハシバミの花穂が垂れていて春の訪れを感じる。最後の民家を過ぎると道は未舗装の林道となる。途中で道は左右に分かれるが道標に従い右折する。周辺は伐採してあり見通しがよい。ふと山側の斜面を見ると木彫りのフクロウが置いてある。このフクロウは下山コースでも見かけた。
 間もなく、ひこばえの森に到着。ちょっとした広場と地図入り案内板がある。森は海の恋人植樹祭などでひこばえの森から矢越山頂まで植えられた樹種や年度が表示されている。「森は海の恋人」で思い出したのだが同様のタイトルで唐桑町のホタテ養殖のパイオニアの方が書いた小説を読んだことがある。著者は減少する漁獲量を回復する試みとして気仙沼湾に注ぐ川の水質を改善するために室根山に植樹した。案内板を見て室根山ばかりでなく矢越山まで関わっていることを知る。
 さらに林道を進むと登山口の道標がある。この場所から山頂の羽山神社が見える。植林地の中を進む。植林後10年ほどしか立っていないので樹高は3mほどで見通しがよい。ブナ、コナラ、カエデ類が多い。下草は笹で覆われている。雪解け間もない頃なので道はややぬかっている。山頂が間近に迫ってくる。
 羽山神社の裏側を上り詰めると山頂に着いた。大きな岩が多数露出しているのでその一つに腰掛け休憩を取る。小生の場合、午前10時前に山頂に到達することは滅多にないので今日は焦らずゆっくり下山できそうなのがうれしい。北面に室根山、東面に気仙沼湾、西面に束稲山が見渡せるがそれ以上の遠方は薄くガスがかかっているので視界はきかなかった。
 矢越神社方面に下る。アカマツ林の中を所々にある大岩を避けながら下った後ツツジのトンネルの中を一直線に下る。その突き当たりにある鳥居をくぐるとベンチがある。ここで登山道は右に直角に折れスギ林の中を進むと矢越神社が見えてくるがその手前に八人ばらしのイラスト付き案内板が立っている。案内板から右手に続く細道に入ると5分弱で八人ばらしに着く。二つの大岩の下に人がやっと入れるほどのスペースがある。

八人ばらし
 花崗岩の大きな岩で、昔この木で数人が雨をしのいだことから「八人ばらし」と呼ばれるようになったとのことです。

 矢越神社の本殿から参道を下る。参道の両脇のスギの大木は見応えがあった。参道の入口に矢越神社と羽山神社の由緒書きがあった。八人ばらしの案内板と同様、地元の方が製作したイラスト入り案内板である。

矢越神社
 昔、矢越山は釘山と称し、酋長安倍頼時が陸六郡を侵盗し人民を苦しめていたので時の朝廷より命を受けた源義家が八百万の神様で最も勇猛である武甕神に陣中に於て祈願した一節が今に伝えられている。「自ら玄弓を取りこの一矢をもって釘山を超過せよ、そして戦捷を吾れにあたえたまえ」。矢は高く舞い上がり釘山を越して現在の浜横沢に落ちたという。それより釘山は矢越山となり治暦二年(1066)神殿を建立する。
羽山神社
 仁寿元年(852)慈覚大師村人の病死をなげき薬師如来を勧請する。明治維新後羽山神社と改める。羽山神社は大巳貴命を祭神として居ります。

 参道入口から林道が続きひこばえの森に戻ることもできそうだ。しかしここでは文献1に従い直進しスギ林の中の細道を進む。麓の集落で車道を左折、右折し県道18号に出た。県道を北上し矢越駅に戻る。線路脇の土手にフクジュソウが咲いていた。本日は予定より早くしかも午前中に山歩きを終えることができた。しかしその分疲労が蓄積されたようで体調は思わしくない。下りの快速列車(矢越には停車しない)を見送った後、上りの普通列車に乗車し帰路に着いた。
 市営バス矢越駅前→両国橋行き 703, 811, 1209, 1414, 1713

参考文献
※1「新・分県登山ガイド2 岩手県の山」藤原直美著 山と渓谷社2006年6月発行

矢越山
岩手県一関市
標高519.6m
JR一ノ関駅前から岩手県交通バス気仙沼行き高沢バス停下車
2012年7月21日
 825 JR水沢
 845〜910 JR一ノ関(バス乗り換え)
 958 高沢バス停
1100 ひこばえの森手前の丁字路(トイレあり)
1127〜1230 矢越山頂
1309 矢越神社参道入口
1324 関取場交差点
1354~ 畑ノ沢鉱泉たまご湯
1607 JR千厩
1755 JR水沢
参加者5名(小生含む)

 元々は夏山一泊登山の予定だったが参加者の都合で次回に延期となった。今回は日帰りとし、経費は次回に備えて節約型、体力も温存したいため所要時間がかからないことを念頭に計画された。当初は市内の山で計画を進めていたので慰労会も市内の飲食店を予定していた。慰労会を考慮し予定を立てた所一関市室根の矢越山に決定した。理由は近くに畑ノ沢鉱泉たまご湯があることを偶然発見したからだ。webページ掲載の写真では質素な温泉のようなので昨今の近代化された日帰り温泉施設より惹かれるものがある。決して家族連れが大挙して訪れるような所ではない。矢越山とたまご湯、素朴なもの同士で良い組み合わせだと思う。
 一ノ関駅前から気仙沼行きのバスに乗車する。高沢バス停で下車。ちょうど国道284号と県道18号の交差点で南西角にコンビニがある(国道沿い少し西にも別のコンビニがある)。思っていたより便利な所だ。県道18号を南に進む。上折壁小学校手前で交通量が多い県道18号を避け左の脇道に入る。この道は小学校のジョギングコースになっていて100m間隔で距離表示のプレートがある。途中にアイガモ水田がある。あいにく小屋の中で休憩中で田んぼで泳いでいるものはいなかった。脇道は丁字路に突き当たる。ここに水車小屋こっとんこ(動いていない)とひこばえの森交流センターがある。車道を登る。沿道のアジサイ群落が眼を楽しませてくれる。前回訪れた早春の時期と比較すると草木が茂ったので印象は異なる。道は森の中のトンネルを通っているようで心地よい。沿道の樹木はアカシデ、ミズキ、クサギ、コクサギ、ハシバミ。花はノリウツギ、ヤマブキショウマ、ヒメジョオン、キンポウゲ、ウツボグサ、ヨツバヒヨドリ、オカトラノオ、チダケサシ。
 道は未舗装の林道に変わる。林道の丁字路では右折。ここに工事現場でよく見かける仮設トイレが3つ置いてある(使用可能)。まもなくひこばえの森に着く。前回訪れた時この付近は伐採跡地や植林したばかり背丈の低い木が多かったが今は鬱蒼とした森に変わっていた。木々が成長したことがわかる。ひこばえの森は気仙沼のホタテ養殖のバイオニアの方が植林したところで有名である。道脇に真新しい復興祈念植樹のプレートが立っているのを見て複雑な思いがした。震災後でも継続して植林をしていることを知る。ユリノキの大木があり、このような山地に植えられ育っているのは珍しいと思う。
 林道の左から分岐する登山道に入る。この一帯は植林された木々が背丈を超す程度まで成長している。イロハモミジ、ヤマモミジ、ブナ、トチ、クリ、ミズナラ。さらに成長するともっといい雰囲気の森になりそうで楽しみだ。山頂付近は低木が多くなり日当たりの良い場所にオカトラノオが咲く。振り返ると北面に展望が開ける。登山道は山頂の羽山神社の裏に通じている。展望はほぼ360度。東の気仙沼方面の海はガスで見えない。西面直下に県道18号沿いの集落や田畑が箱庭のように見え低山とは言えぬ高度感があって展望も良い。山頂付近は大岩が積み重なっているが頂上だけは平らなので昼食休憩に絶好の場所だ。畳三枚ほどの大きさの岩の上に陣取りビールで乾杯。この日は他の登山者に合わず我々の貸切状態だった。
 下山は矢越神社に下る。山頂の大岩の西側から下りの小径が続いている。ツツジに囲まれた道はちょっと急斜面だがロープが敷設されている。登山道はベンチのある広場で右に直角に折れスギ林の中に入る。間もなく矢越神社が見えてくる。参道に樹齢数百年と思われるスギの巨木が立ち並ぶ。やがて林道に出る。登山道は林道を横断しているが鬱蒼としたスギ林の中を通るので入り口が分かり辛い。うっかり林道を進みそうになる。この登山道は元々神社の参道のようで古い石碑が沿道に点在する。途中で再び林道を横断(鳥居をくぐる)。一直線の下りだった道はこのあたりから左右に曲がりながら下るようになる。足元はびっしりとウワバミソウ(開花中)が生えていて地面が見えない。所々マムシグサも目立つ。見覚えのある木彫りのフクロウの前を過ぎる。最後も鳥居をくぐり車道に出た。
 すぐ丁字路があるが左折。そのまま進んでいくと間もなく舗装された車道に出た。南側に小学校(釘子小)の建物が見えるので現在地の把握ができた。次の目的地は畑ノ沢鉱泉である。舗装車道を北に進む。道なりに行くと県道18号に出た。100mほど県道を南進すると西に道が分岐する丁字路がある。ここに「たまご湯2km」の大きな案内板がある。また丁字路東側に矢越山の登山コース案内板もある。丁字路で右折(西に進む)。しばらくは歩道があるので歩きやすい。
 旧室根村と千厩町の境界の峠を越え車道を下っていくと再びたまご湯の案内板がある。左前方に温泉の建物が見えた。駐車場に10台ほどの車があって今日は混んでいそうだ。玄関の引き戸を開けると左に下駄箱がある。右手に廊下が続く。廊下の隣は休憩室だ。廊下に棚があってお菓子やカップラーメンが置いてある。休憩室の一角(廊下側)に受付があり入浴料500円を支払う。貸しタオルは無料だった。廊下の突き当たり右側が男性用の更衣室・浴場となっていた。更衣室は六畳くらいの広さがあるが既に湯上がりの先客が数名いてさらに我々5人が加わるとちょっと狭い。まぁ、狭さや混雑は想定していたので譲り合いながら入浴しようと思う。
 幸いにも浴室には誰もいなかった。浴槽に入るとちょっと熱めの湯だがそのうち慣れてきた。次第に肌がつるつるになってくる。温泉の名称(たまご湯)の由来通りだ。肌の荒れがなかなか治らない小生には有難い。寒い時期は体が温まる湯だと感じる。風呂上りに休憩室に入ると先に上がったメンバーが既にキュウリの漬物をつまんでいた。「ここにはお酒はありませんか」と小生が尋ねると休憩中の方々から声がかかる。「あっちの方に車で3分位のところにあるから買ってこい」「あそこで酒売ってんのか」「あのヤマザキか」など。帰路にその店の前を通ったが結構遠い場所にあった。「これ飲んでけ」と、受付のおばあさんが冷蔵庫の中からペットボトルのジュースを持ってきた。グラスも人数分出てきた。アイスも買って食べた。
 休憩室の人々の会話を聞くと気仙沼の被災地から訪れているひとが多い。小生の地元(奥州市)の温泉にもよく行っているとのこと。住宅再建が最大の関心事で土地探しや、工務店のうわさ話が続く。また大金をはたいて家屋を修理したのに防潮提建設の計画が決まり立ち退くしかないなど。3.11震災以来沿岸地区に行ったことが無いが、話を聞く限りまだまだ復興には時間がかかると実感する。
 帰路はジャンボタクシーを呼び、たまご湯から千厩駅に向かった(千厩タクシー3020円)。
 後日談: その約1ヶ月後の8月25日、水沢競馬観戦に出かけた。最終の第11レースは「こっとん市レース」という冠名が付いている。その日の競争番組表に以下の記載があった。
8月25日水沢競馬競争番組表
11Rこっとん市レースB2一組
こっとん市
「森は海の恋人植樹祭」の会場となる一関市の矢越山のふもとで、海の幸や山の幸に感謝を込めながら、市が開かれます。開催日:毎日第1日曜日の午前中 場所:ひこばえの森交流センター

 矢越山には縁があるようだ。しかしご利益は無く馬券を外した。もっと真面目に矢越神社に願をかけるべきだったと反省している。

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