焼石岳・南本内岳
岩手県奥州市、西和賀町
標高1549.9m, 1486m
JR東北線水沢駅前からバスまたはタクシー
【写真】南本内岳山頂

2010年6月26日
 520 自宅発
 749〜802 つぶ沼園地〜登山口
 847 ・・・の石
 854 金山沢(つぶ沼1.8km, 銀明水4.1km地点)
 939 石沼
1051 銀明水
1210 泉水沼
1232〜1300 焼石岳山頂
1325 東成瀬分岐
1344〜1400 南本内岳山頂
1414 東成瀬分岐
1433 東焼石岳分岐
1445 泉水沼
1537 銀明水
1629 石沼
1659 金山沢
1740 登山口
2010 自宅着

 小生が最初に焼石岳に登ったのは中学生時代の夏休みの学校行事の時である。この時は学年全員が早朝に学校に集合、つぶ沼まで貸切バスで移動し山頂に向かった。その後、再訪する予定を立てたこともあったが実現せずに年月が過ぎた。一方、ここ数年は文献※1記載の山々を巡り歩いていて最後に残ったのが南本内岳である。南本内岳は昨年まで西和賀方面からの林道が通行止め、その影響で登山道も刈払いが行われていないとのこと。焼石岳も岩手・宮城内陸地震の影響で中沼コース登山口に至る林道は不通となっている。そこで今回はつぶ沼コースから焼石岳を経由し南本内岳を目指すことにした。尚、市内の山なのでハンデとして自宅からつぶ沼まで自転車で移動とする(これも以前からの計画にあった)。
 胆沢区愛宕から国道397号に入り、ひめかゆ温泉手前の分岐まで自転車で難なく到達した。ここから胆沢ダムの付け替え新道になり自転車にはつらい上り坂が続く。ここは無理せずに自転車を押して進む。最初のトンネルを抜け胆沢ダムの堤体の脇を過ぎ二つ目のトンネルにはいる。こちらのトンネル内は照明があるが暗く路面が見えにくいので登山用のヘッドランプを点ける。二つ目のトンネルを抜け左折。直進方向は新設の道路が続いているがバリケードがあり進入できない。一気に坂を下ると胆沢ダムの裏(上流側)に至りその後は旧来の国道397号を通る。小生にとってこの旧397号を通るのは今回が最後となるだろう(8月に上述の新道が開通した。胆沢ダム完成後、旧道はダム湖底に沈む)。道の両側の雑草が茂り道はやや荒れている。景色の良い石淵ダム湖沿いの道を通る。地元の観光地としてよく訪れたダムでそれなりに大きなダムだと思っていたが、先ほど通過した胆沢ダムに比較するとため池程度にしか感じられない。胆沢ダムの巨大さを実感する。
 つぶ沼まで上り坂が続く。自転車を押しながら進むがそれでも苦しい。いつまで続くのかと思いながら進んでいくと急に目の前が開けつぶ沼キャンプ場に着いた。入口のトイレ裏に自転車を置き歩き始める。登山者用の広い駐車場は国道397号を挟んで反対側にありほぼ満車状態だ。登山口は駐車場からさらに車道を北に200m程進み未開通の付け替え国道が右手から合流する地点にあった。入口の登山カードに記入する。
 最近の体調は良好とは言えない上に既に自転車で体力を消耗している。登山口からしばらく上り階段が続くが足どりは思っている以上に重い。前後にいる団体登山客(談笑しながら歩いている)のペースに付いていくことさえ容易ではない。ユキツバキ群落を過ぎブナ林に入る。蝉時雨を耳にしながら進む。道は文献※1などに記載の通りぬかるみが多い。ユキザサ、タニギキョウを見かける。もうじき金山沢に着く付近の道は地震で崩落したため迂回路を通ることになっていた。登山口から約1時間で金山沢に着く。かなり疲労しているのでここで休憩。ぬかるみ対策のためロングスパッツを装着した。道標には「つぶ沼1.8km, 銀明水4.1km」とある。まだまだ先は長い。
 登山口から同じ団体客に追い越されたり追い越したりを繰り返す。都合、何度も同じ人に挨拶をしている。石沼で初めて展望が開け残雪を抱いた焼石岳を望むことができた。この付近も地震で石沼側の路肩が崩落している。日当たりが良い場所にハナニガナ、サラサドウダン、ツクバネウツギ、タニウツギ、コケイラン。石沼を過ぎると下り坂となる。ここで2度目の休憩。ペットボトルのスポーツドリンクを一気に飲み干す。残り少なくなった水を補給するためには何とか銀明水までたどり着かねばならない。沿道にミヤマカラマツ、マイヅルソウ、タムシバ、ガマズミ、ムシカリ。
 再び上りの道となる。周囲の樹木の丈が低くなり頭上の空が開けてきた。この辺りは湿地帯である。初めのうちは路上にツルキツネノボタン、道脇の草むらにタヌキランが多い。シラネアオイ、ズダヤクシュ、オオバキスミレ、サンカヨウと続く。進んでいるうちに雪解け水が流れる湿原をいくつも横断する。ここにはリュウキンカ、ミズバショウの群落。中沼コースの合流点で最初の雪渓に出合う。雪渓の縁は階段状にステップが刻まれていたが急斜面なので滑り落ちないように注意する。湿原の花を見ながら進んでいるうちに疲労感を忘れていた。
 銀明水に到着。大勢の登山客でごった返している。早速、湧き水を補給しベンチで休憩。忘れていた疲労感が戻り胸が苦しく頭もうなっている。ぐったりとしながら今日はここで限界だと思う。食欲もない。ここから雪渓の上を歩くことになるので状況によってはもっと時間がかかるかも知れない。1リットルほど水をがぶ飲みし15分ほどじっとしていた。すると体調がいくらか回復しこれならまだ歩けそうな状態である。やっと登山モードにスイッチが切り替わったという感じだ。
 明瞭な登山道は避難小屋の分岐点で消失しそこから雪渓を登る。踏み跡は不明瞭で前方にいる登山者を目標にしながら進む。雪渓の下を沢が流れている所は踏み抜かないように注意だ。大雪渓と呼ばれる場所もコースの目印となる標柱はない。雪渓右手に時折現れる夏道が目印となる。大雪渓を抜けるとツヅジ類の小木地帯と石ころの多い道に変わる。沿道に高山植物が多くなる。ハクサンチドリ、カラマツソウ、ムラサキヤシオツツジ、ウラジロヨウラク、ハナヒリノキ、キバナノコマノツメ、ヒナザクラ、コイワカガミ、イワイチョウ、チングルマ、ハクサンイチゲ、ツマトリソウ、ミツバオウレン、ミヤマシオガマ、ゴゼンタチバナ、ミヤマキンバイ、シロバナニガナ、ショウジョウバカマ、ミネザクラ、ミヤマカタバミ、ベニバナイチゴ、ムシトリスミレ、イワオトギリ、ホソバイワベンケイ、コタヌキランなど
 泉水沼に着くと眼前に焼石岳山頂が迫る。横岳方面の分岐を過ぎると左手に秋田県側の展望も開ける。最後の踏ん張りで山頂に到達した。持参した文献※3記載通りのコースタイムだったが小生にとっては楽ではなかった。食欲が戻ってきたのが幸いだ。昼食休憩しながら北面に見える南本内岳を目指すのかそれともここで引き返すのか考える。山頂から観察していると秋田県側のコースを利用している登山客が多いので南本内岳入口(東成瀬分岐)までの道は問題無さそうだ。また南本内岳入口から姥石平を経由し泉水沼に至るコースにも登山客が見えるので通行可能のようである。何より今日のような好天は滅多にないと思われるので南本内岳を目指すことにした。
 山頂から秋田方面に下山する。岩手側より急斜面だ。やがて露岩帯に変わり岩の上を飛び石で歩く。岩に記されたペンキがコースの目印である。一帯は球果を付けたミヤマネズが多い。足場が悪いのでなかなか前に進まない。東成瀬分岐は十字交差点で左が東成瀬、直進はバリケードがあり通行不可、右が南本内岳・東焼石岳に向かう。右折すると10m程で南本内岳コースが分岐する。残雪で登山道が覆われていて不安だが踏み跡を目印に南本内岳に向かう。この残雪を過ぎると良好な登山道が現れる。南本内川源流の池塘脇を過ぎ斜面を登ると草原が広がる。沿道にハクサンチドリが多い。この辺りが最高標高点と思われる場所に小さな標石が立っているが文献※1では権四郎森(標高1492m)と記載がある。南本内岳の表示は無いのでもう少し先に進んでみるが、少しずつ下っていくので不安が増大する。登山道はやがて左にカーブするがここで風景が一変し右手にワタスゲの池塘が点在する。左手からは南本内岳お花畑コースを進む人の声が聞こえる。すぐにお花畑コースと合流し100mほどで南本内岳の山頂に到達した。山頂は尾根の突端にあるので360度の展望がある。座り心地の良い岩に腰掛け東面の東焼石岳〜牛形山に連なる稜線を見ながら休憩した。5〜6名の登山客がいるのみで賑わっていた焼石岳とは対照的に静かな場所だ。
 帰路は南本内岳分岐まで戻り焼石山頂には向かわずに姥石平・東焼石コースを通る。前半は灌木が続くがやがて草原が広がりお花畑に変わる。ハクサンイチゲの花は終わりかけているが本日の主役であろう。次いでムシトリスミレが多い。登山道両脇に鉄のポールが立ち並び立入禁止を示しているのだろうが手足やザックが引っかかりそうで危険を感じる。この時間でも続々と登ってくる団体とすれ違うがこれから金明水避難小屋に向かうのだろうか。
 泉水沼でつぶ沼コースと合流しその先は往路と同じコースをたどる。銀明水では小生一人のみ。南本内岳に寄り道していた間にほとんどの人が下山したようだ。後は確実に下山することに専念する。石沼、金山沢でしっかり休憩をとり無事に登山口に着く。登山カードに下山報告を記入した。それから自宅まで自転車に乗る。胆沢ダム付近を除けば自宅のある水沢区内までずっと下りなのが幸いであった。

参考文献
※1「新・分県登山ガイド2 岩手県の山」藤原直美著 山と渓谷社2006年6月発行
※2「再発見 胆江地方から見える山々」及川慶志著 胆江日々新聞社2000年4月発行
※3「夢キャッチ! 来るたび焼石 いつも旬」奥州市胆沢総合支所商工観光課発行の焼石連峰ガイドブック

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