赤谷鉱山鉄道


赤谷鉱山は新発田市の南東,加治川上流の飯豊山系麓にある。この鉱山の発見は今から190年前と言われ,鉄・銅・亜鉛などを産出してきたが旧国鉄赤谷線の廃止や産出量の減少などのため,現在は主に石灰岩を採掘している。

小生が初めて赤谷を訪れたのが1992年11月7日 。鉱山から産出する珍しい鉱物を探しに出かけた。東赤谷の鉱山施設を過ぎると道路の南側に平行して赤錆びたトタン板で囲ったスノーシェッド(雪囲い)が続いている。中に何があるのだろうと思ってトタン板の隙間から中をのぞいてみると路面にレールが敷かれている。鉱山鉄道が通っていたのだ。よく見ると上に架線が引かれており電車であることがわかった。しかし既に寂れてしまった鉱山に今でも鉄道が走っているとは信じられなかった。廃止されたが撤去されずに残っているだけだと思った。この日はあいにく小雨が降り赤谷から加治川ダムまで徒歩で往復しただけである。

1994年10月30日。爼倉山登山に出かける。この時もトタン板のスノーシェッド(雪囲い)は残存していた。カメラを持ってきたので写真に収める。帰りに東赤谷でのバスの待ち時間の間,赤谷鉱業所の施設を見学する。操業している施設はほとんどなく廃墟に近い。東赤谷バス停の後方にはまだ旧国鉄東赤谷駅舎が残っていた。さらにその後方に赤谷鉱業所の機械工場の建物がある。その建物の中に鉱山鉄道の車両があり,思わず驚いてしまった。中は薄暗いので低速シャッターで慎重に写真を撮る。しかし,どう見てもこれらの車両は現役を引退し風化を待つのみと思われた。

1994.10.30
道路沿いに続くスノーシェッド
1994.10.30
スノーシェッドの中
1994.10.30
機械工場
手前がトロッコ
奥が電気機関車
1994.10.30
バス停東赤谷終点
後方が旧国鉄東赤谷駅舎跡
後方右が赤谷鉱業所機械工場
1994年12月24日。自宅で爼倉山登山の写真の整理をしていると友人のA氏が訪ねてきた。A氏にこれらの写真を見せると鉱山鉄道の写真に非常に興奮したらしく「すぐに見に行きたい,案内してくれ。」とせがまれ車で赤谷に向かった。しかし先日からの降雪のため東赤谷の砕石プラントから先は除雪されてなく行き止まり。仕方なく周囲の山々の雪景色を眺めながら風景写真を撮る。砕石プラントの道路を隔てた反対側に鉱山鉄道に下りる階段がある。危険・関係者以外立入禁止と入り口に立て札が立っていたので最初は躊躇したが誰もいないことだし中に入ってみることにした。

中にはいると運良く車両が残っていたのでしばらくの間お互いに記念写真を撮りあう。そのうちにトンネルの奥の方からコゴーッという音が聞こえてきた。だんだんその音が大きくなってくる。音の鳴る方向に目を凝らすとヘッドランプの明かりが次第に近づいてくる。我々は何が起こっているのかわからず呆然として立ちすくんでいた。ヘッドランプは我々の目の前まで近づきそして消灯した。その時,小生は完全に仰天してしまった。ヘッドランプの主は何と電気機関車だったのだ。

電気機関車から乗務員が二人降りてくる。何か咎められるかもしれないと思いびくびくしたが意外にもお互いに「こんにちは」と挨拶を交わし友好的な雰囲気であった。鉱山鉄道が今でも現役で活躍していることに感動してしまった。トタン板のスノーシェッド(雪囲い)のおかげて冬期間でも電車が運行し採掘できることを知る。

1994.12.24
坑内作業者用の車両
1994.12.24
電気機関車
1997年10月19日。爼倉山登山に出かける。この時もまだトタン板のスノーシェッド(雪囲い)は残存していた。まだ細々とではあるが鉱山鉄道は運行されていると確信した。一方,旧国鉄東赤谷駅舎は全く跡形なく消え去っていた。東赤谷で新潟交通バスの折り返し時間の間,バスの運転手にいつなくなったのかと訊くと「ああー,あのボロ屋。いつの間にか無くなってしまったなぁ。」という返事だった。

1999年7月24日。前日北股岳に登り湯ノ平山荘で一泊。早起きして,湯ノ平から赤谷まで歩く。爼倉登山口まできて愕然としてしまった。今まであったスノーシェッド(雪囲い)が無い。レールも架線も無い。かつて鉱山鉄道が通っていた面影は皆無である。ブルドーザーのキャタピラの跡が無惨にも残っているのみ。ついに廃止か。おそらく誰にも知られずひっそりとその使命を終えたのだろう。新潟の名物電車がまた一つ消えてしまった。

1999.7.24
道路の左側をかつては電車が走っていたのだが完全に撤去され跡形もない。
1999.7.24
機械工場跡地
既に廃墟。しかしレールはまだ残存していた。

・撮影データ
Camera:PENTAX SuperA,CONTAX TVS
Lens:RIKENON 55mmF1.2,Vario sonner 28-56 F3.5
Film:Konica XG400,LV100,Kodak Ektachrome dyna100
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