陸中海岸自然遊歩道

船越半島を訪ねるみち

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コース概要

山田町。船越半島を一周するコースです。北限のタブノキ、荒神海水浴場、大釜崎、漉磯海岸、金剛赤平、霞露ヶ岳などの見所があります。
旧タブの木荘→4.5km→小谷鳥→9.2km→漉磯口→2.8km→漉磯海岸口→3.1km→霞露ヶ岳→1.8km→小根ヶ崎(延長21.4km)

交通アクセス

旧タブノキ荘はJR山田線岩手船越駅前から県北バスに乗車、終点田の浜で下車後徒歩。
小谷鳥はJR山田線山田駅から県北バスに乗車し終点小谷鳥で下車。
漉磯・小根ヶ崎はJR山田線山田駅から県北バスに乗車、大浦漁協前で下車後徒歩。

第一回調査(旧タブノキ荘→小谷鳥)

2010年3月7日
 616 JR水沢
 851〜947 JR釜石
1025 JR岩手船越
1100 しもがわ公園
1110〜1147 荒神社・荒神海水浴場
1215 旧タブノキ荘、船越駐車場
1231 海岸線(旧タブノキ荘0.5km地点)
1321 旧タブノキ荘2.1km,小谷鳥2.4km地点
1334 旧タブノキ荘2.6km,小谷鳥1.9km地点
1410 階段(小谷鳥まで0.7km地点)
1425〜1455 小谷鳥海岸
1523〜1531 小谷鳥口バス停
1542〜1634 長林バス停〜JR岩手船越
1710〜1742 JR釜石
2025 JR水沢

コースを歩いて

 本コースは総延長が20kmを超える長大コースである。地形図でコースを確認すると船越半島をほぼ一周しその半分以上は起伏に富む山中を通っている。これでは一日で完歩するのは到底無理と思った。しかし昨年から陸中海岸自然遊歩道を歩くことを目標にしてきたからには避けて通れないコースである。数回に分けて歩き通すことにしたい。(以前霞露ヶ岳に登ったことがあるので本コースの霞露ヶ岳〜漉磯間は既に訪れているのだが今回改めて歩いてみるつもりである。)
 第1回目は遊歩道起点のタブノキ荘から小谷鳥の区間を歩くことにした。JR岩手船越で下車。船越湾の風景を見ながら砂浜(前須賀海水浴場)を経由し船越漁港へと向かう。オナガガモ、カルガモ、オオバン、コガモ、ウミネコを見かけた。

【写真1】船越漁港

 漁港の南端部にしもがわ公園があり海上にも遊歩道が続いている。この先から車道の幅員が急に狭くなり左手が山、右手は海岸となる。海岸側にはガードレールは設置されていない。ぼんやりして歩いていると海に転落しそうだ。しばらく進むと荒神海水浴場の休憩施設と駐車場がある。この付近は砂浜が広がりいかにも海水浴の適地だ。すぐ近くにある弁天島が景観的特徴である。また海水浴場から山側に続く石段を上ると荒神社がある。案内書きによると敷地内に閉伊頼基の墓があるとのこと。肌寒い日であるが参拝客もちらほらと訪れている。ヤブツバキ、モミ、マサキ、アカマツ、スギ、コナラ、ヒノキアスナロ、タブノキ、ヒサカキ、ヤマツツジ、ヤツデ。ハマギクは葉が開き始めた頃である。

【写真2】荒神海水浴場

 神社入口付近に遊歩道の地図入り案内板があり、これによると荒神海水浴場からタブノキ荘まで海岸沿いに遊歩道が続いている。このコースは本日の主目的である陸中海岸自然遊歩道ではないが起点のタブノキ荘までの最短ルートと思われるので通ってみることにした。海水浴場の南端から細道が続いている。海岸線すれすれの道と山側を迂回する道があるがすぐに合流し弁天島に真正面に向き合う場所に出る。遊歩道は岩礁地帯の海岸線に沿って続いている。人間が何とか通行できるよう海水面すれすれの岩が開削されている。波の浸食で道が陥没している場所もあるので高潮の時は通行不能であろう。陸中海岸にある遊歩道の中でも難易度が高そうだがそれ故に自然の厳しさが身にしみる。
 海岸線を忠実になぞりながら道が続くが遂に入江に阻まれ前進困難となった。もう少し波が穏やかであれば対岸の岩まで3段跳び位で届きそうなのだが仕方がない。あきらめて引き返そうとすると行き止まりと思った位置の岩盤に適度なステップが刻まれていて上方に上れそうな感じである。上ってみるとその先に明瞭な道が続いている。入り江にはコンクリート製の橋が架けられ、危険な個所には金属パイプの柵が設置されている。海水面から一段高い場所を進むので安心かと思いきや、金属パイプの柵の多くは溶接接合部から腐食し分離しているのを見ると気が抜けない。入り江に架かる橋を何度か渡るが非常に冷や冷やした。いくらか開けた岩場の上で休憩。この付近の岩は波の浸食で縦横に細かい亀裂が刻まれていて自然の驚異を一層感じる。進んでいくと次の入り江に架かっているはずの橋は基礎部分を残して消失していた。これは引き返すしか無さそうだ。引き返しながら山側の斜面に迂回路がないか注意したがこれといった明瞭なものは見当たらなかった。

【写真3】入江には橋が架けられている

 荒神社に道中の安全を祈願した後、タブノキ荘に向かう。海水浴の休憩施設前で右折し未舗装の林道を上っていく。標高が高くなるにつれタブノキが目に付くようになった。丁字路で右折、道幅が広くなりいよいよタブノキ荘に到着と思ったが広大な空き地があるのみ。船越駐車場と記された敷地にはスギ、アカマツなどの丸太が積まれている。持参した地形図にも建物の表記がないことから国民宿舎タブノキ荘は廃業したことを知る。この影響で荒神海水浴場〜タブノキ荘に通じる遊歩道も荒廃したのもだろう。人気のない駐車場と更地(タブノキ荘の跡)の間の舗装道を南に進むと草地広場で道は途絶える。その一角に陸中海岸自然遊歩道の地図入り案内板が立っていた。ここが起点となるが全く寂しい場所である。広場の周囲にタブノキの巨木があるが顧みる人はいるのだろうか。尚、タブノキを見かけたのはタブノキ荘周辺のみなのでやはりこの辺りがタブノキの北限になっているのだろう。(岩手船越駅のホームにもタブノキがあるがこちらは植栽と思われる)

【写真4】タブノキ

【写真5】起点の道標(タブノキ荘跡地)

 最初、遊歩道は荒れた林道のような道であるがすぐに左折し細道を下る。間もなく景色の良い湾に出る。岩礁地帯はコンクリートの護岸の上を歩くようになっている。湾の最奥に砂浜が広がる。

【写真6】海岸に出る

 湾に流れ込む沢を遡るようにして道が続いているが途中から伐採現場に入り道が不明瞭になる。作業用の道が枝分かれするし道に枝葉が堆積していてわかりにくい。沢から尾根に上がる地点で右往左往を繰り返したが何とか脱出。しかし進んでいくと林業用作業道(パワーショベルなどが通行する)に突き当たった。作業道と遊歩道は同一ルートと予想し泥でぬかった作業道を進む。しかし作業道は途中から下りとなり異なる方向に進んでいることに気づいた。少し引き返し上り方向に分岐する作業道に入る。運良く遊歩道を見つけることができた。遊歩道は尾根筋を上っていく。しかし5回くらい作業道に分断されるため作業道の切り通し斜面を上り下りすることになる。遊歩道は次第に上り勾配がきつくなり本格的な山歩きの様相となる。樹木はアカマツ林からコナラ、クリなどの広葉樹に変わる。要所に道標があるので道は明瞭であるが膝から腰の高さの細木を払いながらの進行だ。樹間から右手に小谷鳥海岸、左手に船越湾が望むことができ本来なら景色を堪能すべき所かも知れないが息が切れ切れの小生にはその余裕は無かった。
 地形図で示されている標高305mのピークを過ぎると下りになる。所々丸木で作られた階段がある。途中から遊歩道上に細木が茂り通行が楽ではない。違う道に迷い込んだのではと心配になる。左手眼下に小谷鳥海岸が見えてきた。道を違ってもこのまま下っていけば何とか海岸に着けるだろうといくらか安心する。すると思いがけず鉄製の真新しい階段が現れた。かなりの急勾配である。よく見ると階段に並行して旧道跡が残っている。旧道は通行困難なため新たに階段を新設したと思われる。今日通ったコースを振り返ると荒廃したタブノキ荘跡地〜伐採現場で分断された遊歩道〜楽ではない上り〜刈払いされていない下りと不遇なコースだっただけにこの新設階段には驚いた。
 長い新設階段を下り平坦な場所を抜けコンクリート製の短い階段を下ると小谷鳥海岸の砂浜に出る。本日の遊歩道歩きはここまでである。帰りは大浦(小谷鳥口バス停)からバスに乗車するつもりだが少し時間に余裕があるので先に続く遊歩道のコース(小谷鳥〜ロラン局)の下見をした。

第二回調査(小谷鳥→ロラン局→漉磯口)

2010年3月22日
 616 JR水沢
 851〜947 JR釜石
1025 JR岩手船越
1050 小谷鳥バス停
1100 小谷鳥海岸
1112 精英樹展示林
1124 ロラン局手前の分岐
1133 十字路(漉磯6.3km,小谷鳥2.8km地点)
1142 四等三角点
1200 昼食休憩(漉磯5.0km,小谷鳥4.1km地点)
1234 清水(漉磯3.5km,小谷鳥5.6km地点)
1250〜1310 寄り道、海岸へ
1330 (漉磯0.8km,小谷鳥8.3km地点)
1345 漉磯口
1453〜1531 小谷鳥口バス停
1542〜1634 長林バス停〜JR岩手船越
1710〜1742 JR釜石
2025 JR水沢

コースを歩いて

 今回は小谷鳥から漉磯口までの区間を歩く予定だ。出発地の小谷鳥までのアプローチ時間短縮のためJR岩手船越駅前から小谷鳥バス停までタクシーを利用(料金\2,010)。まずバス停から少し歩き小谷鳥海岸入口にある遊歩道の地図入り案内板を確認する。
 次の目標地点となるロラン局までは一部未舗装区間があるが遊歩道と言うより一般車道並みの道である。起伏が少ないため思った以上に歩行ペースが上がる。途中、精英樹展示林・船越半島のスギと記された案内板があった。精英樹の樹幹越しに海を見ながら進む。ロラン局跡地の更地が見え始めた。ここで道路の左手に階段があり漉磯方面を示す道標が立つ。この階段から続く細道に入ってみた。イタヤカエデ、ハリギリ、コナラ、クリに囲まれたコースだがやや荒れていてあまり人が入っていないようだ。少し斜面を登った地点に十字交差点がありここに自然遊歩道の道標が立っていた。この交差点を右折(南に進む)し下っていくとロラン局跡地に出るようで現在はこちらのコースがよく利用されているのだろう。
 十字交差点を直進する。一転してコース状態は良好となる。先週の大雪の名残で遊歩道にはまだ雪が残っているところがある。四等三角点のある小さな峠を越えた付近からケヤキなどの高木が多くなる。樹木はまだ葉芽の状態なので見通しがよく日が射し込み明るい。右手には枝越しに海岸が見える。次第にブナが多くなってきた。小沢に架かる橋の近くで休憩。本日のコースは海の近くなのに深山の雰囲気、起伏が少なく歩きやすいという点で、トドヶ崎〜種刺海岸を通る自然遊歩道によく似ていると思った。
 遊歩道沿いに次々と現れるアカマツ、ブナ、シナノキ、ケヤキの巨木を堪能しながら進んでいく。やや開けた場所に清水(水場)があった。途中、時間的に余裕があるので遊歩道を外れ小沢に沿って下り海岸に出てみることにした。海岸は高さ10mほどの断崖で河口部は狭い入り江になっている。下に降りるのはさほど困難ではないものの大岩が積み重なっていて踏み外したら危険なので引き返した。海岸の景色を見ることができたので充分と思う。遊歩道に戻る途中、肩から下げていたカメラが岩に当たりカメラの外装に亀裂が入った。やはり寄り道は良くない。安全第一で焦らず慎重に進もうと気を引き締める。尚、このカメラは誤操作のため第一回調査の後半から写真が撮れていなかった。それに気づいたのは5月になってからである。今思うと、この時期は体力・気力とも不調で往復の列車内では病人のように寝ていた状態だった。それでいろいろミスも多かったのだろう。無事に帰ってこれたのは幸いだった。
 漉磯口まで残り1km付近から登り勾配が続く。途中右手に海に切れ落ちた断崖があり本日のコースでは絶景と言える場所である。間もなく舗装された車道に突き当たり漉磯口に到達した。車道脇に遊歩道の地図入り案内板と車3台程の駐車スペースがある。近くに生えるクロモジはまだつぼみである。
 車道を歩き大浦まで戻る。バスの時刻に余裕があるので漁港入口にある公園で休憩。ウミネコを見ながら残っているおにぎりを食べる。冷たい風が吹きかなり寒いがこの寒い季節ももうじき終わるとなると苦にならない(この時はそう思ったが無理がたたりその後1週間以上体調不調に陥った)。

第三回調査(漉磯口→霞露ヶ岳→小根ヶ崎)

2010年4月10日
 616 JR水沢
 851〜947 JR釜石
1025 JR岩手船越
1117 大浦(小谷鳥口バス停)
1220 漉磯口
1240 丁字路右折(漉磯口1.3km,漉磯海岸1.5km地点)
1258 漉磯海岸
1330〜1345 休憩
1354 四等三角点
1422 霞露ヶ岳
1459 小根ヶ崎
1621 林道分岐
1629 漉磯方面分岐
1656〜1706 小谷鳥口バス停
1717〜1836 長林バス停〜JR岩手船越
1910〜1918 JR釜石
2305 JR水沢

コースを歩いて

 今回は本遊歩道の残りの区間となった漉磯口から小根ヶ崎までを歩く予定である。普段、岩手船越駅前に常駐しているタクシーは1台なので小生は列車から下車後しばらく待機し誰もタクシーに乗らないことを確認してからタクシーに乗ろうと思っていた。今回はタクシー利用客がいて小生と同様釜石線・山田線と乗り継いで来られた方であった。年齢的にもはるかに若い小生が譲らねばならない。そのことは想定していたので徒歩で漉磯口へ向かうことにした。元々そう簡単に本遊歩道を踏破できるとは思っていない。今までがスムーズに行き過ぎた。久々に鯨の科学館〜大浦までの道を歩く。
 大浦から漉磯口まで峠越えの車道を歩く。沿道はシイタケの栽培地だ。第二回調査後、岩手船越駅近くにある道の駅山田に立ち寄った。ここで知ったのは山田町はシイタケの特産地であること。特に表面に工芸品のような網目模様のあるシイタケが有名のようだ。標高約250mの峠を越えるがまだ完全に回復していない身には応える。漉磯口に到着し少し休憩を取る。近くのクロモジは第二回調査時より花芽が膨らんだ。
 漉磯口から漉磯海岸の間は舗装された車道を通る。まず、漉磯口からしばらくカーブが連続する道を下る。この付近の景観はロラン局から続く遊歩道と同様で高木が立ち並ぶ樹林帯の中を抜ける。丁字路で道標に従い右折。数件の民家がある漉磯集落を過ぎると小沢に並行した下り坂の道となりやがて漉磯海岸に着く。特に観光施設はないが数台の車が行き交う。春の陽気に誘われ行楽客もちらほらと訪れているようだ。
 ここに至るまで相当体力を消耗している上に既に午後1時を過ぎていて時間的に本日予定していた行程を完遂するのは難しいと感じる。海岸の風景を見てリフレッシュした後、霞露ヶ岳への登りに取りかかる。アカマツ林の中、つづら折りの上りとなる。疲労が蓄積している足は動きが重い。胸も苦しくなる。そこで水を飲むと腹痛が始まった。東側は金剛赤平と呼ばれる断崖で直下の海岸線に波しぶきが見える絶景ポイントなのだが風景を楽しむ余裕は無い。体に異変を感じ15分ほど休憩を取る。
 休憩すると意外にもすっきりと体調が回復した。この先も歩き続けられそうだ。地形図上で標高421mの四等三角点を過ぎると道は緩やかな登りに変わる。樹木もアカマツからブナに変わる。北側の斜面にはまだ残雪がある。幅広い尾根のコースでブナの巨木が点在する。やがて樹木の枝越しに霞露ヶ岳の山頂プレートが見えてきた。
 霞露ヶ岳山頂は2年前にも訪れたがその時と変わりがない。畳一畳ほどの大きさの山頂プレートがある。西面に山田湾の展望がある。さて、この先の行程をどうするか考えた。残っている霞露ヶ岳〜小根ヶ崎の区間を今日中に歩くのか、または次回に持ち越すのか、である。残された距離と時間から今日中に何とか歩けるだろうと判断し小根ヶ崎に向かうことにした。
 山頂から5分ほど下ると平地と思えるほどの広い尾根に出る。まだ葉が出ていない早春の森で気持ちよく歩くことができる。遊歩道の道標の距離表示が小根ヶ崎まで残り1kmを切り、三回に及ぶ遊歩道調査が終了する時が近づいてきた。標高が下がるにつれアカマツ林に変わる。途中、北面に展望が開けた場所がある。山田湾を隔てて重茂半島、その突端に灯台が見えるが本州最東端のトドヶ崎灯台だと気づき感動した。間もなく遊歩道の終点、小根ヶ崎に到達した。車5台ほどの駐車スペースと遊歩道の地図入り案内板がある。この地点からもトドヶ崎灯台は良く見える。
 バス停がある大浦まで未舗装の林道を歩く。道は平坦だ。靴擦れのため砂利を踏むたびに足の裏がひりひりする。右手のアカマツの枝越しに展望があり山田湾と重茂半島が見える。船越半島と重茂半島間の距離は最も近いところで1kmしかない。そのため山田湾は海峡のようだ。重茂半島の川代集落、鳥糞島、明神崎を見ながら南下する。ウォーキングの2人と擦れ違う。大浦のバス停(小谷鳥口バス停)に到着し全行程を終了した。
<完>

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