陸中海岸自然遊歩道

鵜の巣断崖と海辺のみち

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コース概要

田野畑村。高さ200mの断崖の下を海岸つたいに通るコースです。
白池海岸→1.8km→真木沢海岸→1.4km→鵜の巣断崖展望台(延長3.2km)

交通アクセス

起点の白池海岸・終点の鵜の巣断崖展望台とも三陸鉄道島越駅

調査日

2009年3月29日
 616 JR水沢
1157 三陸鉄道島越駅
1225 白池海岸
1250 にわが磯隧道(白池海岸1.1km、真木沢海岸0.7km地点)
1259 にごり隧道(白池海岸1.4km、真木沢海岸0.4km地点)
1304 みきひ場隧道(白池海岸1.5km、真木沢海岸0.3km地点)
1306 ながおり隧道(白池海岸1.6km、真木沢海岸0.2km地点)
1310 真木沢隧道・真木沢海岸
1332 鵜の巣駐車場(鵜の鵜断崖0.5km、真木沢海岸0.9km地点)
1342〜1410 鵜の巣断崖
1427 真木沢海岸
1508 白池海岸
1535〜1652 三陸鉄道島越駅
1731〜1811 JR宮古
2155 JR水沢江刺

コースを歩いて

 列車が島越駅に到着した。乗降客は小生のみ。運転手に乗越料金を支払い下車する。駅前広場に出ると陸中海岸自然遊歩道全コースの案内板がある。冷たい風が吹くのでザックの中のネックウォーマーを探すが見つからない。来る途中(たぶん釜石駅)で紛失したようだ。タオルを首に巻き付け代用とする。商店が並ぶ車道を東に進むと魚市場を過ぎ漁港に出る。ここは北山崎の観光船乗り場にもなっていて食堂などがあるがシーズンオフなのでまだ営業していない。観光船は船着き場に浮かんでいた。
 車道を南下すると小川の河口一帯にパワーショベルやクレーンなどの建設機械が並ぶ工事現場に入る。海岸線を南下する車道(県道44号)は通行止めで迂回路の表示があるが迂回したのでは遊歩道始点の白池海岸に到達するのは困難となる。せっかくここまで来たのだから通行許可をお願いしようと思いトラック車内で昼休みの作業員に話しかけると「向こうの工事は担当が別なのでわからないが徒歩なら通れるかも知れない」とのこと。よく見ると同じ場所で水門工事と土砂崩れ復旧工事の二つの工事が行われている。通行止めのバリケードを越え先に進む。行く先々で事情を話し通してもらうつもりだったが昼休みのせいか作業員に会うこともなく土砂崩れの現場に着いた。車道は土砂で埋まっているので注意しながら左手の海岸線すれすれのテトラポット脇を抜けた。土砂の中から再び車道が現れ工事現場を通過した。尚、土砂崩れの工事は8月末までの予定となっている。
 シライケ沢を渡ったところが起点の白池海岸で本コースの地図入り案内板がある。また波が高いときは通行禁止と記された注意看板も立つ。ここから海岸に下る10段ほどの階段の入口に「←真木沢海岸1.7km」と書かれた木製プレートがあった。当然整備された道があるものと思い階段を下りこれから進もうとする南側の海岸線を見るが道はない。海岸線すれすれまで断崖が続いているので波を避けるには断崖の直下のわずかなスペースを進むことになるのだろうかと不安になる。海寄り側は小石の浜なので歩きやすいが次々と打ち寄せる波で進路が阻まれる。結局、断崖寄りの岩がごろごろしているところを飛び石で渡り歩くことになった。

【写真1】起点の案内板

【写真2】白池海岸

 距離の割に時間がかかるコースのようなので最初は写真でも撮りながらゆっくり風景を楽しみながら進もうと気楽に考えていた。しかしその考えは間もなく消失した。カメラ(重さ700g)片手で歩くと岩場での転倒や断崖からの落下物があったとき逃げ遅れる危険を感じるしカメラを水没させる恐れもある。カメラをザックにしまい軍手を着用する。幸い、人の踏み跡はある。行けるところまで行ってみるしか無さそうだ。波が断崖まで打ち寄せここから先は行けそうもないと思える箇所が多数。こんな場所では波が引くまでしばらく待機。波の引き際を見計らって素早くダッシュで通過する。
 何度もこのダッシュを繰り返し少しずつ歩みを進めていくと前方に最初の隧道(にわが磯隧道)が見えた。隧道の北口に遊歩道の道標もある。隧道は海面より一段高いところにあるので岩をよじ登って入口に立つ。隧道の長さは10m程で暗くはない。ただし海側の底面が波の浸食で穴が明いていて注意しないと穴から海に滑り落ちる危険がある。隧道の南口の方も岩場を下るが降り口付近は窪地で海水が進入していて容易には降りることができない。ここでは適当な足場を見つけるのに苦労した。にわが磯隧道を過ぎると砂浜が広がる。今まで狭いスペースを綱渡り的に進んできたのでほっとするがまだ予断を許さない。

【写真3】にわが磯隧道北口

 やはり砂浜は長くは続かず断崖の中腹(断崖から崩れた露岩の上)をトラバースする。これはほとんど登山だ。にごり隧道は海面から5m位高い位置にあり自分の背丈よりも高い岩盤を登らないと隧道に入れない。どうやったら登れるのか手がかりを探しながら右往左往すると岩盤にステップが刻まれている場所があった。この隧道の距離は長く中は暗い。ヘッドランプを点ける。
 みきひ場隧道とながおり隧道の間は海水による浸食でできた洞穴になっている。広さ20畳ほど高さ10mほどで洞穴の入口(海水の進入口)よりも広いし高い。本コース最大の見所と思われるが頭上に岩盤があるところは落ち着かない(次回来るときはヘルメットを着用したい)。急いで先に進む。最後の真木沢隧道を抜けたところが真木沢海岸だった。

【写真4】真木沢隧道と真木沢海岸

 真木沢海岸から雑木林の中の上りとなる。ケヤキ、クリ、コナラ、スギ、イタヤカエデ、クロモジ、ホオノキ、ハリギリなど。途中、作業道と合流、分岐するが道標があるので迷うことなく進むことができた。平坦な道になると一帯はアカマツの造林地となる。間もなく鵜の巣駐車場に出た。駐車場には車一台も無い。
 ウッドチップが敷かれた快適な遊歩道を進む。沿道は桜並木である。鵜の巣断崖の展望台に着く。真っ先に北側の海岸線を見る。そこには観光ガイドブックなどでおなじみの鵜の巣断崖からの眺望があった。そしてその断崖の下をたった今自分が歩いてきたことをそのとき初めて知り驚いた(なぜなら遊歩道が通る場所とガイドブックの写真の場所は別と思っていた。ガイドブックの場所はもっとすごい断崖で到底人が歩けるような所ではないと思っていた。)。断崖の北端に北山崎観光船乗り場の漁港が見える。南面の海岸の展望も良く直下に洞門のある島が見える。

【写真5】展望台から北面

【写真6】展望台から南面

 吉村昭文学碑の裏のベンチで休憩。文学碑には、「星への旅 水平線に光の帯が・・・」と刻まれている。吉村氏の作品では三陸大津波という文庫本を数年前に読んだことがあり感慨深い。吉村氏は田野畑村に取材や講演で何度も訪れているようである。碑の周囲は地元の学生が植樹したブナ、ウリハダカエデ、トチ、カシワ等が立つ。鵜の巣断崖命名ゆかりのウミウは見かけなかった。また植物はハマハイビャクシン、ハマギク、コハマギク、スカシユリの生育地と案内板にある。

【写真7】吉村昭文学碑

 帰路は往路を引き返す。来るときは気が付かなかったが鵜の巣駐車場の遊歩道入口に県道工事中のため白池海岸へは通行できないとの注意書きがあった。真木沢海岸から海沿いの道を戻る。潮位が上昇したらしく来るときよりも明らかに歩行可能なスペースは狭い。それでも問題なく、にわが磯隧道の南口まで到達した。しかし、にわが磯隧道の南口は波が引いても地表面が現れないほど浸水していた。波が引いたときをねらって飛び石で少しずつ進むが途中から次々と波が押し寄せなかなか渡るタイミングがつかめない。このままでは不意の高波が来たら足下からすくわれそうである。意を決して膝下まで海中につかり隧道の入口まで上った。
 この先、白池海岸までほとんど崖の直下を歩く。露岩の上で歩きにくいが往路で地形と所要時間を把握しているのでペースを保ちながら焦らずに進む。崖まで波が打ち寄せる場所があるので波をかぶること数回。しかし無事に白池海岸に到着した。歩行時間は短いが膝はガクガクだ。海岸入口の階段に腰掛けてしばらく休憩する。上空にウミネコとトビが舞う。
 最後の難関は県道工事現場の通過だが今日は休業日らしく作業員が見当たらない。あっさり通過する。島越駅での待ち時間は駅員との雑談(選抜高校野球花巻東高校の勝利)や駅前の賢治文学碑(発動船二)を見ながら過ごした。

<完>

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