東北自然歩道 新・奥の細道

厳美渓谷のみち

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【写真0】八幡沢の森林コースにて

● はじめに

厳美渓は磐井川の急流が岩石を浸食してできた渓谷です。甌穴も数多くあります。これらは自然の作った芸術作品です。小さい頃の小生にとって厳美渓のもうひとつの楽しみはだんごでした。そのほか,ガラスパークや馬車(今も走っているか不明)などの見所があります。一方,達谷窟は舞台造の毘沙門堂と磨崖仏で知られています。どちらの場所も岩手県南の観光スポットとして賑わっています。

甌穴:最初岩石の弱いところにくぼみができ,そのくぼみに入った石が転がりながら穴を大きくしてできたもの。

● 調査日

2001年11月24日

● コース概略図

自然休養村管理センター→0.4km→天工橋→0.9km→長者滝橋→1.1km→八幡沢→1.9km→田代→1.3km→達谷窟 (計5.6km)

新奥の細道(厳美渓)

このコースは,国の名勝天然記念物(昭和2.9.15)に指定されている厳美渓を通り,一関市八幡沢地区の森林を散策しながら,北限の磨崖仏として知られている達谷の窟に至る5.6KMのコースです。厳美渓は2kmに及ぶ渓谷で両岸が石英粗面岩であり,その奇岩怪岩を経て流れる急流が四季それぞれの天然の美を楽しませてくれる。

● 交通アクセス

起点の自然休養村管理センターは,JR東北新幹線一ノ関駅から岩手県交通バス(8番のりば・厳美,須川行き)に乗車し沖野々バス停で下車。バス所要20分。運賃\490。沖野々バス停の先約200mに厳美渓バス停がある。詳細の時刻表は岩手県交通のホームページを参照下さい。

終点の達谷窟からは東磐交通バスに乗車しJR東北本線平泉駅か厳美渓に戻る。運行本数は一日二往復と少ない。
厳美渓行10:15,15:00/平泉行10:30,15:15

● コースを歩いて

JR東北本線一ノ関駅で下車。本日は三連休の中日で平泉への定期観光バス乗り場には長い行列ができている。10:00発の観光バスは満席で出発した。10:10発の厳美渓(渓泉閣)行きのバスに乗車する。こちらも意外に乗車人数が多いが,大半はサティへの買い物客であった。厳美渓バス停で下車。土産物屋が建ち並ぶ賑やかな通りを自然歩道の道標を探しながら歩き始める。

起点の自然休養村管理センターは厳美渓バス停から国道342号を一関市街地方面(東)に向かい200mほどの所(北側)にある。そのすぐ先に沖野々バス停がある。広い無料駐車場があるので車で来るならここに駐車するのが良い。駐車場の一角に公衆トイレあり。管理センターの一階は食堂になっている。管理センターに隣接して古い民家が保存されている。屋根は茅葺き,入ると土間があって昔懐かしい雰囲気である。見学は自由。公衆トイレの近くに院内街道(一関から秋田県に抜ける旧街道)の案内板があった。自然歩道の地図入り案内板は駐車場の入口(国道に近い側)に立っている。

【写真1】自然休養村管理センターに隣接する旧家

磐井川を左手に暫く国道を歩く。国道といっても車がやっと対面通行できるくらいの道幅しかない(これは数十年前と変わらない)。歩道はなく車道を歩くことになるので注意が必要だ。道標に従い御覧場橋に下る。この付近にある老木(50本)は貞山桜といわれ伊達政宗が植栽したと案内板にある。御覧場橋は吊り橋で渓谷の下流にある。厳美渓の地質学的成り立ちについて記した案内板が御覧場橋北詰に立つ。

【写真2】御覧場橋から上流(天工橋)方面

御覧場橋を渡り右岸の林の中を歩く。この付近の紅葉もよい。ただし今日明日が見納めとなるだろう。途中に石碑が建っていて案内板によると美馬留(りゅう)偉跡とある。美りゅうとは美しい栗毛の馬の意味。明治23年米国から輸入された牝馬とのこと。土産物屋の脇を通り天工橋の南詰に出る。この付近が厳美渓の中核で渓谷は深く狭く流れは速い。渓谷美と名物の郭公だんごを賞味する観光客で賑わっている。

【写真3】天工橋から上流方面

土産物屋や食堂が建ち並ぶ通りを過ぎると一変して静かな道となる。温泉旅館(渓泉閣,いつくし園)が渓谷の右岸(南側)にあるので自然歩道はさらにその南側の平凡な道を通る。1kmほど進みアーチ型をした長者滝橋を渡る。この橋は昭和初期に造られた竹筋橋(注:鉄筋ではなく竹筋)である。一部大水で流失した部分があるそうだが現在も健在(車の通行も可)である。川岸は【写真4】のようにたいらで休憩にはちょうど良い。小生は,ここで昼食とした。

【写真4】長者滝橋から上流方面

長者滝橋を渡ると国道にでる。国道を左折するがすぐに北側のあぜ道に入る。農家の前を通ったあと道は右(東)にカーブする。十数本の木々に囲まれて宇南権現神社があった。社殿は小さく学校の百葉箱程度の大きさである。江戸時代の創建らしい。

【写真5】宇南権現神社

あぜ道を北に向かって進む。車道に突き当たったところで右折する。その先に【写真6】の道標が見えてくる。ここに「なの花バス」の4区公民館前バス停(水・金運行)がある。ここで左折し八幡沢集落に入る。集落内は登り坂となり道標の指す向きが道の向きと一致しない個所がありとまどうが枝道に入らずにそのまま直進する。里山の手前で車道は左にカープししばらくすると畑の中で車道は終点となる。【写真7】

【写真6】4区公民館前バス停付近(長者滝橋1.0KM,八幡沢0.1KM地点)ここで左折し八幡沢集落に入る。

【写真7】車道の終点。この先は山道となる。(長者滝橋1.8KM,田代1.5KM地点)

畑の中のあぜ道を200mほど進むと林の中に入る。道はいっそう狭くなり登山道の雰囲気となる。登り口付近は藪を払いのけながらの歩行であった。この先大丈夫かと心細くなったが尾根筋にでるとしっかりと整備された気持ちの良い道となった。惜しむらくはほとんど紅葉が終わっていたことである。

【写真8】森林の中でも道はよく整備されている。

森林の出口(田代集落側)は広い草原となっていて一気に視界が開ける。ここも絶好の休憩地点である。ここから近くを流れる小川の左岸を進み車道に出る。車道を東に向かって歩くと程なく終点の達谷窟に着く。

窓口で拝観券300円を支払い境内に入る。堂宇が点在するが全国的に知られているのは坂上田村麻呂が創建した毘沙門堂である。建築様式は京都の清水寺と同じ舞台造である。案内板にはこの毘沙門堂を管理する別当の見解が記されてあり,坂上田村麻呂を絶賛している。おそらく最近の阿弖流為復権ブームで坂上田村麻呂の立場が危うくなってきていることに警告を発しているのではないか,と思われる。いずれにしても2002年は阿弖流為没後1200年として胆江地区各地でイベントが行われる中で歴史の再評価が進むことを期待したい。

【写真9】毘沙門堂

毘沙門堂は高さ約50mの崖の中に半ば食い込んだ状態で建築されている。この崖の西側に顔面大佛が刻まれている。もともとは,顔面のみではなくその下の胴体部分もあったが地震により崩落したとのこと。言い伝えでは,源義家が前九年の役で亡くなった霊を供養するために馬上より弓を以て彫りつけたとある。

【写真10】顔面大佛

達谷窟前に駐車場とトイレの設備,自然歩道の案内板がある。帰路はバスの便には早いので徒歩で平泉駅まで向かう。駅まで歩道が整備されていて非常に歩きやすい。平泉からレンタサイクルで周遊している親子も見かけた。途中,姫待瀧がある。悪路王がこの場所で京から掠めてきた姫の帰りを待ったとの伝説がある。

【写真11】姫待瀧
<完>

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