東北自然歩道 新・奥の細道

天台寺を訪ねるみち

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● はじめに

 二戸市浄法寺地区の景勝地滝見橋から浄法寺塗の原料となるウルシ林や古刹天台寺を通るコースです。

● 調査日

2007年4月28日

● コース概略図

(起点)滝見橋→2.4km→運動公園→2.5km→宮沢集落→1.8km→天台寺→1.8km→長流部口バス停(終点)

● 交通アクセス

 起点の滝見橋はIGRいわて銀河鉄道二戸駅からJRバス荒屋新町行に乗車し滝見橋で下車(荒屋新町行は運行本数が少ないので浄法寺行に乗車し終点で下車後、徒歩で滝見橋に向かうこともできる。距離は1.5km)。終点の長流部口はIGRいわて銀河鉄道二戸駅からJRバス荒屋新町行または浄法寺行に乗車し長流部口で下車。

● コースを歩いて

(注・小生は終点から起点に向かう逆コースで調査したので,本文も逆コースの案内となっています。)
 二戸駅前からJRバス浄法寺行に乗車。浄法寺まで安比川に沿ってバス道(県道6号)は続く。最近新道ができたらしく、ほとんどの車両はトンネルを通過でき所要時間が短い新道を通る。しかし路線バスは途中から旧道に入り集落の中の狭い道を抜けていく。県北の外れの町でさぞかし寂しい風景が続くだろうと思っていたが沿道の集落は途切れなく続き先入観は覆された。
 長流部口バス停で下車。料金\510。バス停のすぐ近くに自然歩道のコース案内板が立っている。

新奥の細道
東北自然歩道 天台寺を訪ねるみち
 このコースは滝見橋から八葉山天台寺を経て、漆沢までの8.5kmの自然歩道です。
 沿線には、国の重要文化財に指定されている天台寺の「木造聖観音像」や町の史跡「浄法寺館」、日本一の生産量を誇る「ウルシの木」等が見られ、浄法寺の史跡や産業文化に触れることができる片道約3時間のコースです。


【写真1】終点の長流部口

 バス道(県道6号)から分かれ南東方向にある長流部集落に向かう。集落手前で道が左右に分かれるが道標に従い左折。その後、坂道を上って100m先ですぐに右折となる。今度は斜面を下る。短区間で右左折と坂の上り下りが連続する。しかし、並行して平坦かつ直線の道路もあるのに不思議なコース選定に感じる。
 高速道路の高架下を抜けるとすぐ右手に道標がある。コースはここから登り坂の細道に入る。最初は高速道路の東側に沿って進むが次第に高速道路から遠ざかり静かな山中の道となる。早春の季節であるがニワトコがやっと葉を広げた程度でほとんどの樹木はつぼみであった。


【写真2】天台寺に上る細道

 天台寺境内に入る。本堂の周囲を取り囲むように小さな社殿が建ち並んでいる。恵比寿堂・山王社・大黒堂等々。逆コースから上ってきたので案内のパンフレットや拝観券も無く要領を得ないが、先ず本堂に参拝。その後、他の参拝客の見よう見まねをしながら小さいお堂約10カ所にも参拝。小さいお堂は全部で幾つあるかわからないが一回りしたら相当な御利益があるのだろう。
 本堂は萬治元年(1658)南部重直公が造営したもので本格的密教仏堂であり国指定重要文化財に指定されている。境内のサクラはまだつぼみであった。


【写真3】天台寺本堂

 その後、姥杉の焼跡などを見学。仁王が立つ山門をくぐり参道の階段を下る。受付があり一旦通過したが引き返し拝観料(正式には文化財保護協力金\300)を支払った。拝観順路を逆にたどっているのでどうも行動がちぐはぐである。この拝観券で宝物収蔵庫の展示品(恐らく重文の観音像など)を拝観できるのであるが気づかずに参道の出口まで下ってしまった。これは次回の宿題とし今回は重文の本殿とご本尊の仏像を見ることができたので良しとしたい。
 参道登り口にカツラの大木があり、その根元から清水が湧いていて「桂清水」と呼ばれている。またこの付近には、トイレ、自然歩道のコース案内板、歴史民族資料館などもある。参詣客用に杖も何本か置かれている(長寿の杖と記されていた)。


【写真4】桂清水

 参道登り口にある案内板を眺めていると南の方に土踏まずの丘という場所がある。興味が引かれたので寄ってみることにした。林内の作業道を進むと草が刈払われていて見通しの良い小高い丘がある。丘の頂点付近に小祠と1本のモミの木が立っていた。カタクリの花もまだ残っていた。

土踏まずの丘
 地中に尊い経文が埋められているとのことから何人もここに登ることを禁じられ除草するにも匍匐して手を延ばしたという。また周辺は常に清められ、盂蘭盆会には赤飯を丘下五箇所に供えることを例としていた。


【写真5】土踏まずの丘

 車道を下る。車道に沿う歩道は石畳である。街路樹にサクラが植えられているがこちらもつぼみであった。途中、滴生舎(漆器の製作見学・販売施設及び食堂)がある。高速道路高架下を通り、県道6号の交差点を横断し宮沢集落に向かう。集落内の浄法寺消防団第4分団前で左折する(南に向かう)。


【写真6】消防団第4分団(ここで左折)

 左手が里山右手が水田、のどかな田園風景となる。そのまま南下する。県道6号と合流する手前に道標がありここから右手の斜面に上る細道に入る。細道の入口に幾つかの下駄と傘が地面に立てた棒に吊されていて何の意味があるのだろうと思ったが、その先は墓地だったので納得した。
 墓地を横断すると運動公園口1.2km、宮沢集落1.2kmと記された道標が2カ所隣接して立っていて直進なのか右に分岐する細道に入るか紛らわしい。迷ったが右の細道に入る。ジグザグに斜面を上り雑木林の中の道となる。
 途中にウルシの木の案内板があった。この地点の右手の森は伐採され草地となっていた。倒されて放置されている木をよく見ると樹皮に等間隔に溝が切られていて黒い樹液がしみ出ている。ウルシの木であった。傷だらけの木は見るからに痛々しい。二戸市のパンフレットでは以下のように記されている。

 身に受けた傷を癒そうと溢れる樹液は、痛ましくけな気であり、だからこそこれほどのうるおいを纏った質感が生まれ出るのかもしれない。

生漆(きうるし)
 うるしの木はウルシ科の落葉高木で樹皮から漆液(生うるし)を採り、器などの塗料として使われる。南部藩の手厚い庇護もあり、生漆、漆器の産地として栄えた。浄法寺塗りは今でも質、量ともに日本一。浄法寺塗りの漆器は伝統工芸品に指定されている。


【写真7】ウルシの木

 雑木林を抜けると、たばこ畑となる。

葉たばこ
 ナス科の一年草。夏の盛りに成熟した大量の楕円形の葉を収穫し丹念に乾燥しタバコになる。南アメリカ原産。品種改良により種類は豊富。浄法寺町で栽培されているのは気候的にマッチしたハーレー種。
 昭和30年代から作付けを奨励し、主要換金作目として町内に定着している。


【写真8】たばこ畑

 運動公園入口から舗装道となる。そのまま道なりに県道6号(体育館がある)まで下ってしまう。県道を荒屋新町方面に進んでみるが頼りとする道標が見つからない。この辺りは浄法寺の町の中心部で裏通りの狭い道にも入り右往左往するが手がかりが無く再び運動公園まで上り返す。その途中南東方向に分岐し下る道があったのでそちらに入ってみた。再び市街地に入るがやっと道標を発見した。


【写真9】ここで右折

 自然歩道は県道6号のバイパス的な道を通り安比川にせりだしている丘陵を越える。その丘陵の頂点一帯が浄法寺館である。この館跡のすぐ南面が次の目的地福蔵寺であるが自然歩道はそのまま車道を下り大回りをしている。

浄法寺館(じょうほうじたて)
 浄法寺氏累代の本拠地として伝えられる。浄法寺氏は、源義経追討を命じられた畠山重忠の子孫といわれ、14代重恒の代に南部藩に属したのち、25代重房のとき南部家臣(5000石)になったといわれている。この館は南北方面に連なる八幡館、大館、西館、新城館の四郭でなる。全体の規模は、東西400M南北700Mとなっている。


【写真10】浄法寺館跡

 福蔵寺に立ち寄る。忠魂碑や慰霊塔などの石碑が墓地の中に点在しその中から猫塚を探し出すのは難しい。何となくこれかもしれないという物はあったが確信が持てず結局断念した。数百年前の塚なので見分けがつかなくなっているのかもしれない。

福蔵寺と猫塚
 ここの先にある福蔵寺には「猫塚」があり、その言い伝えによると慶長4年(1559)南部藩主信直公の葬儀の際その棺が中天に舞い上がったが、五世住職大突和尚の祈念でようやく静まったという怪事があった。和尚が可愛がっていた猫の霊力の助けを借りて静まったとされ、以来猫塚にその猫の霊を祭ったとされている。


【写真11】福蔵寺

 起点の滝見橋に到着。滝の西面にベンチと東屋があって休憩ができる。ただし橋の上からの景観が最も良いと思う。

滝見橋
 「源氏蛍も逢いに来る・・」と二戸小唄にも歌われている安比川唯一の景勝地。白いしぶきを上げる滝と、奇岩をぬう激流のコントラストに春のお花見、夏の釣り、川面に紅葉の映える秋、人々にとって一時の安らぎを与えてくれる場所となっている。


【写真12】起点:滝見橋

 近くにバス停があるが時刻にかなりの間があるので(荒屋新町から来るバスは本数が少ない)浄法寺駅(バスの始発地)まで戻ることにした。途中の煎餅屋で南部煎餅を焼いているのを見て煎餅が食べたくなる。浄法寺駅〜二戸駅バス料金\630。二戸駅西口に隣接する物産センターで迷わず浄法寺塗りの箸と南部煎餅を買った後、電車で帰路に着いた。

<完>

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