東北自然歩道 新奥の細道

古刹をめぐるみち <黒石寺>

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● 黒石寺(起点)


▲ 黒石寺本堂

駐車場の右手前方に本堂を見上げることができる。現在の本堂は一八八四(明治一七)に再建されたものである。本堂の左側に薬師堂がある。薬師堂の中に国の重要文化財である薬師如来と僧形座像が保存されている。薬師堂には「三十三観音霊場 奥州第二十五番 江刺第七番」と記されており霊場巡りの団体客が薬師如来の拝観にやってくる。

本堂への階段の上り口に黒石寺の案内板が立っている。

−−−黒石寺の案内板の内容−−−

黒石寺は寺伝によれば天平元年(七二九)行基菩薩の開基で東光山薬師寺と称したが嘉祥二年(八四九)慈覚大師が復興妙見山黒石寺と名を改めた天台宗の古刹である。

本尊は薬師如来でカツラ材の一木造り,胎内に貞観四年(八六二)の墨書きの造像記があり,平安初期の在銘作例として彫刻史上貴重な像である。永承二年(一〇四七)銘の僧形座像(伝慈覚大師像)とともに国の重要文化財に指定されている。

ほかに日光・月光両菩薩像,持国・増長・広国・多聞の四天王像,十二神将像の合わせて一八躰は県指定の文化財である。

昭和六十二年八月 水沢市

上述のように慈覚大師が黒石寺と命名したのだが命名の由来は山中に黒岩(蛇紋岩)多かったからだということである。近くの大師山には黒い大きな岩石が多数見られるので納得できる。

薬師堂は通常入口の扉が固く閉ざされている。いつかは中に入り重文の薬師如来を拝観したいと思っていたが小生一人で拝観を申し出るのは躊躇していた。1998年10月に通りがかったところ運良く白装束の遍路姿の団体客が拝観に来ていたのでその中に紛れ込んで初めて薬師堂の中を見学することができた。薬師堂の中は狭く10人ぐらいの人が正座すれば満員である。中央の大きな像が薬師如来,左の小さな像が僧形座像だったと記憶している。薬師如来の前に和尚が座っていて時折鐘を叩く。左手奥に案内人が立っていて説明をしてくれた。いろいろと興味深い話があったが以下のようだったと記憶している。

黒石寺について
とても古い時代にできた寺。東北では二番目?に古い。
強大な勢力があった。堂宇も像も多くあったが度重なる戦乱(前九年・後三年の役,平泉没落時,戊辰戦争など)で焼失し現在に至る。

薬師如来について
台座(蓮の花の形状)は江戸時代に作り直した。
髪の毛は群青色,その他全身は金箔。

蘇民祭について
蘇民祭は長野県上田国分寺・京都八坂神社にもある。
以前は本当の裸でやっていた。ふんどしはしていなかった。テレビの時代になり照明のためふんどし使用となった。


▲ 黒石寺前の売店と休憩施設

● 蘇民祭

黒石寺は奇祭と呼ばれる蘇民祭でも有名である。小生はまだ現地で見たことがないのでこの祭については文献からの抜粋とさせていただく。 (参考文献:観光水沢一九七三年三月三一日発行水沢市・水沢市観光協会)

蘇民祭は旧正月七日の夜から翌八日の明方にかけて行われる。
この祭の行事は五つからなる。

1.裸参り
七日午後八時頃。祈願者,厄年の善男善女が鐘の合図で社務所前に集まり,各自角燈と浄飯米を持ち,瑠璃壺川(山内川)で身を浄め,薬師堂,妙見堂を巡り,五穀豊穣,災厄消除の祈願を行う。

2.柴燈木登り
午後十時頃。前日境内の山中から採られた生松割木を古式にならい井桁積みに重ねて火を焚く。若人,群衆は山内節を歌いジャッソー,ジョウヤサのかけ声をかけて祈願する。

3.別当登りの式
翌朝午前二時頃。手木(祓棒)が祓人に配られ,別当が守護役,祓人に守られ,法螺貝太鼓を従えて薬師堂内陣に登り,護摩焚き供養を行い,参拝者,祈願者に護摩を授ける。

4.鬼子登りの式
午前四時頃。檀家の七才になる男子二名に麻衣を着せ,籠手をつけさせ木槌(さいづち)を持たせ,鬼面を逆さに背負わせ,水垢離をとった大人に背負われて薬師堂に登り参拝する。

5.蘇民袋争奪戦
五穀豊穣,無病息災を願って故事にならい,疫病の護符である将軍木(かつのき)を削って六方形とし,毎方「蘇民将来子孫門戸也」の九字を書き,寸角に切って麻袋に入れた蘇民袋を檀徒の一人が抱き,外に向かって「蘇民将来」と三度叫び終わるや,裸体の若者たちがこれを奪い合い,堂の外陣は八方から袋をめがけて飛びかかる肉弾相打つるつぼと化す。堂の外陣でひともみもんだあげく,裸体の塊はおのずと堂外へ潮のごとく押し出されてくる。今度は零下数度,寒冷積雪の中である。西に奔り東に飛んで生きものの如き袋の行方を追って奪ったり,奪い返されたり,汗みどろの争奪戦が明け方まで繰り広げられる。白一色の中に展開される男性美の極致である。かくて,激闘三時間近くに及び,ようやく夜が明けそめる頃,取り主ががい歌を挙げる時刻となり,袋を奪った者の地方が五穀豊穣が約束されるという。


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