東北自然歩道 新・奥の細道

リアス海岸尾崎半島のみち

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● はじめに

 岩手県内の東北自然歩道のうち海岸部を通るのは2コースでどちらも釜石市内にあります。本コースが通る尾崎半島は釜石湾から東に細長く太平洋に突き出ています。半島の先端には無人の尾崎灯台があります。また途中には遊覧船の船着き場の青出浜や尾崎神社があります。

● 調査日

2006年10月14日

● コース概略図

尾崎白浜→2.7km→青出浜→1.1km→奥の院→2.4km→陸中尾崎灯台

● 交通アクセス

 三陸鉄道平田駅から徒歩75分で起点の尾崎白浜に至る。また、青出浜へは釜石港から観光遊覧船の便もある。

● コースを歩いて

 釜石駅でJRから三陸鉄道に乗り換え次の停車駅平田で下車。下車したのは高校生数人(近くに高校がある)と小生であった。駅前広場北側に東西に通る道路があるので東に向かって進む。国道45号を横断し交番や郵便局が並ぶ平田地区の中心部を抜ける。登り坂となり最初は平田湾の展望が良いがその後は山中の曲がりくねった道となる。尾崎白浜まで民家は一軒もない。交通量は少ないが徒歩は滅多にいないのだろう。時折、小生の前で車が停車し「乗って行きませんか」「乗らせぇー乗らせぇー」などと誘われる。が、断った。未知の土地なので行き先を聞かれても明確に答えられないので却って不審に思われそうだし、徒歩での所要時間を把握する必要もある。「ちょっと健康のため運動しているので・・・」と答えることにしている。
 佐須方面への分岐点から下り坂となる。さらに尾根を一つ越えると尾崎白浜であるがこの尾根に古い道標が立っていた。

尾崎白浜の追分碑
 右は平田、左は山道
この碑は、浜街道の平田から分かれて、青出しの尾崎神社への参道がこの切り通しの上にあったものでそこに建てられており、昔、南部藩主も通った、旧参道を知るための貴重な碑であります。

三陸津波の慰霊碑は尾崎白浜港を一望できる見晴らしの良い位置にあった。


【写真1】慰霊碑から尾崎白浜港

 自然歩道の起点を探すつもりでとりあえず港の東端まで行ってみたが手がかりが無い。引き返し郵便局脇から南の斜面に上る道に入ってみる。民家の前を数件通り過ぎた後は寂しい林道となる。しばらく進むと熊出没注意看板があり、その数十m先は行き止まりだ。熊出没注意看板から山中に入る細道が続いているが踏み跡も不明瞭な荒れた道である。しかし他に自然歩道の手がかりがないのでこの道を進んでみる事にした。


【写真2】自然歩道入口(熊出没注意看板)

 100mほど進んだところで自然歩道の道標を発見。ほっとする反面、軽装備なのでこの先悪路が続くと難渋しそうなのが気に掛かる。途中尾根を越えるが多方向の道と交叉していてわかりにくいせいか他地区では見られない地図入り道標がある。この道標は破損(熊がかじった?)のため書き直された跡が見られる。


【写真3】地図入り道標

 尾根を越えると緩やかな下りとなりスギの植林地帯の中を通る。1週間前の暴風で枝葉が落下し道に堆積しているので絨毯の上を歩いているようだ。


【写真4】スギ植林地

 林の間から海岸が見えるようになりもうじき尾崎神社に着く頃かと思いながら進んでいくと、突然賑やかな祭ばやしの大音響が海岸線から聞こえてきた。恐らく前準備で音響テストを兼ねテープを流しているのだろう。この様子では今日は神社のお祭りか何かで相当な人出のようだ。ただ、その大勢の人がどうやって神社に到達したのかは疑問である。この自然歩道しか道はないはずなのに誰にも会わなかったしその形跡はない。狐に化かされたような不思議な感覚だ。太鼓の音がドンドコドンドコ鳴り響く。
 自然歩道は尾崎神社の社務所裏に到達する。その頃には祭ばやしの音も止んでいた。社務所の前に回り神社に向かう参道に出る。参道脇に土産物販売と思われる屋台が1台有るが白布が被せてあり売り子らしい女性2名は後かたづけをしているように見えた。祭で賑わっていると思っていたのだが祭はおろか参拝客さえいない。状況が理解できないまま参道を進み神社の前に着く。


【写真5】尾崎神社

 神社脇に自然歩道のコース案内板が立っていた。

新奥の細道
リアス海岸尾崎半島のみち
 ここは「リアス海岸尾崎半島のみち」コースの尾崎神社奥宮です。ここを分岐点とし、陸中尾崎灯台まで歩くコースと、尾崎白浜まで歩くコースがあります。ここから半島の先端までは約3.4kmの距離で、徒歩で片道約70分のコースです。もう一方の尾崎白浜までは約2.7kmの距離で、徒歩で片道約50分のコースです。

 祭りについては小生の誤認のようだ。釜石港を出港した観光船が青出浜に寄港したときに流した音楽と思われる。小生が尾崎神社に着いたとき観光船は既に青出浜を出港し、観光客目当ての神社の売店も閉じているところだったのではないか。そうすると今ここで参道を引き返し青出浜に向かうと船に乗り遅れた乗客と勘違いされそうだ。青出浜には帰りに寄ることにして先に進むことにした。
 自然歩道は神社左側の斜面を上る。神社から灯台まで道幅が広く整備されていて歩きやすい。尾崎白浜から尾崎神社までの荒れた道とは対照的だ。途中に奥の院がある。石柱の柵で四方を囲まれた一画である。

奥の院

 尾崎神社奥の院は、古来から社のないお宮で日本武尊を祀り、御神体は宝剣といわれています。 源頼朝の一武将、鎮西八郎為朝の三男で、当時三陸沿岸地域を治めた閉伊頼基が承久2年に死去した際遺書によりこの宝剣の傍らに葬られたとも言われています。鎌倉時代以前からの古社として知られています。


【写真6】尾崎神社奥の院

 モミの木についての案内板があった。歩きながら注意してみるとモミの木は容易に見つけることができる。

モミの木自生林

 尾崎半島には相当数のモミの木の自生が見られます。モミ(まつ科)は針葉樹で暖帯性の植物ですが、このモミと一緒に、温帯を代表するブナの木も見られます。  暖帯性植物のモミと温帯性植物のブナが同時に自生している林を見ることができるのは国内では特に珍しいと言われています。

 本コースはほとんどが林の中を通り展望は効かないが、一部リアス式海岸の切り立った崖の縁を通る。


【写真7】崖縁の自然歩道からの眺め

 終点の尾崎灯台に着く。灯台の周囲は広々とした草地になっていて展望が良い。自然歩道のコース案内板が立っていた。

新奥の細道
リアス海岸尾崎半島のみち
 ここは「リアス海岸尾崎半島のみち」コースの最終地点です。
 この先には、高さ12mの白亜の陸中尾崎灯台があり、左手には三貫島、右手には死骨崎などのリアス式海岸や太平洋を一望することができます。
 帰りは、青出浜まで約3.5km、徒歩で約70分のコースです。


【写真8】陸中尾崎灯台

 灯台から北面を眺めると三貫島が見える。

三貫島

 三貫島の名称は「漁民達は昔から不漁の時でもこの島の沖に出漁すれば、少なくとも三貫文は漁をした」ことに由来しています。島はオオミズナギドリやヒメクロウミツバメの集団繁殖地として、国の鳥獣保護区、特別保護区及び天然記念物に指定されています。
 釜石出身の作家井上ひさし氏の「ひょっこりひょうたん島」のモデルとも言われています。


【写真9】灯台から三貫島の眺め

 三陸鉄道の時刻や日没を考慮し昼食休憩を早々に切り上げ尾崎神社まで引き返す。帰りに神社の売店で何か適当な土産物でも探してみるか、と思いながら歩いた。しかし神社に着いてみると参道にあった屋台(売店)は無くなっていたし売り子の姿も見えない。これでは土産購入はできないので残念だが、それよりも売り子はどこからどうやって尾崎神社まで通っているのかが気になって仕方がない。参道を下り青出浜に出る。東屋やトイレがある。浜には人や船は見当たらない。船着き場の岸壁まで往復する。浜の対岸の釜石市街地や釜石大観音がよく見える。


【写真10】青出浜

 尾崎神社から尾崎白浜までの山中で誤って違う道に入ってしまい帰路は時間が掛かってしまった。三陸鉄道平田駅の時刻には間に合わなかったので国道45号の平田バス停からバスに乗車し釜石駅に向かった。

<完>

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