東北自然歩道 新・奥の細道

仙人峠秘境のみち

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【写真0】遠野側入口

● はじめに

 釜石線開通前,遠野・釜石間の交通の難所であった仙人峠を越えるコースです。峠の山道のため他のコースと異なり車道歩きが全くありません。遠野物語に仙人峠に関する逸話がいくつかあるので以前からこのコースに興味を持っていました。昔の旅人になりきって歩こうと思います。

● 調査日

2006年5月5日

● コース概略図

遠野側入口→2,1km→仙人峠→1.1km→中仙人茶屋跡→2.3km→釜石側入口

● 交通アクセス

 起点の遠野側入口はJR釜石線足ヶ瀬駅から徒歩45分,終点の釜石側入口はJR釜石線陸中大橋駅から徒歩5分。

● コースを歩いて

 JR釜石線足ヶ瀬駅で下車。国道283号に沿って歩き始めます。歩道がないので道路の右側の路側帯を対向車に注意しながら(特に見通しの悪いカープは注意)通ります。連休中のせいか大型車はほとんど通らなかったのが幸いでした。右手は早瀬川ですが国道と川の間の雑木林にたくさんのゴミが投棄されているのが目に付きます。国道は別称ギンナンロードと言われているようなので紅葉の時期に通るのも良さそうです。
 早瀬川の砂防ダム湖を見物しながら進んでいくと木製白ペンキ塗りの標柱が立っていました。風化で読みづらいのですが「名称片岩」と記されています。この付近の早瀬川左岸の切り立った崖を指しているものと思います。国道を挟んで反対側にベンチ三脚がありますが利用者はほとんどいないと思われます。以前ここに何かの観光施設があったのではないでしょうか。ここから起点の仙人トンネル入口は近くです。峠入口には駐車場・トイレ・水・自然歩道の地図入り案内板があります。

新奥の細道
東北自然歩道 仙人峠秘境のみち
 このみちは,仙人峠を登り釜石に至る旧釜石街道(全長約6m)です。仙人峠の名は仙人が住んでいたため,また,千人の金堀人夫が生埋めになったため付けられたといわれています。
 たくさんの旅人や馬が苦しんだ街道も昭和25年10月釜石線の開通によりその使命を終えました。全行程歩くと約3時間かかります。


【写真1】起点: 仙人トンネル入口

 つづら折が続く道を進みながら次第に高度を上げていきます。自然歩道の標柱は他地区と異なり金属製の柱とプラスチックプレート製です。南側の展望が開け谷を挟んで残雪の高清水山が印象的です。木々には未だに若葉もなく春の訪れはまだ先のようです。カタクリの花は見頃でした。途中,以下の標識が立っていました。

沓掛観音(峠まで0.5km地点)
 沓掛(くつかけ)という地名は仙人峠の登り口で通行人がはきものを木に掛けたことからきています。昔,閉伊頼基の妻乙羽姫がこの地を訪れた際に,がけにクズの花が満開に咲いているのに感激崇拝していた観音像を安置したと言われています。この観音が岩屋の中に長年安置されて見る影も無くなったことから,新しく観音像をつくり,現在曹洞宗慶雲寺に保存されています。

 所々残雪を踏みながら仙人峠に到着しました。一帯はちょっとした広場になっています。「仙人峠標高海抜八八七」と記された板の標柱があります。峠にある小祠に道中の無事を祈願しました。

仙人峠
 仙人堂には仙人の像がおかれ人々から崇拝されていました。御堂の壁には「何月何日の夜,この山道にて若き女の髪を垂れたるに逢えり,こちら見てにこりと笑ひたり」,「此処にて猿に悪戯をせらるたり」などの記述があったと遠野物語に記されています。右腕の無い木造の御神体は現在上野町細越にある通称「御銭堂」に移されています。


【写真2】仙人峠(残雪あり)

 釜石側に下ります。遠野側よりも道幅が広いので歩きやすく感じます。木々に葉がないので見晴らしも良く気持ちよく下っていきます。


【写真3】旧釜石街道釜石側

 中仙人茶屋跡に着きました。案内板にあるとおり文化二年と刻まれた石製水槽があります。今でも山中に200年前と変わらぬ状態で存在するのには驚きです。

中仙人茶屋
 ここ中仙人休場は,大橋と峠頂上との中間地点にあり,文化二年(1805)佐野忠治が坂ノ上から中仙人の休憩所まで約三百五十間(約630m)を木彫りの樋で結び,水を引き休憩所としました。旅人用の石製水槽,馬用の木製水槽がありましたが現在は石製のみが残っています。


【写真4】中仙人茶屋跡と石製水槽(写真左下)

 道中誰一人にも遭わず鳥のさえずりと風の音を友にして下ってきましたがついにクマに遭遇してしまいました。向こうが小生より先に気づき大慌てで逃げ去る様子を目撃しました(従って黒いお尻しか見ていません)。ザワザワバキバキとどこまでも遠くまで逃げていく音がしばらく続きました。昨年はクマの好物のブナの実が豊作でクマの個体数が増えている,注意が必要というニュースは聞いていましたがその通りのようです。クマ除け鈴を持ってこなかったのが失敗でした。

 次第に麓が近くなり橋を渡ると終点の陸中大橋駅はあと100m先です。


【写真5】橋を渡る(大橋駅は写真左上)

 民家の並ぶ路地を抜け国道283号の下をくぐり車道を横断すると陸中大橋駅前の広場です。


【写真6】釜石側入口

<完>

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