東北自然歩道 新・奥の細道

湯治場のみち

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【写真0】一燈庵

● はじめに

 多田等観ゆかりの円万寺から林道を経由し大沢温泉に至るコースです。

● 調査日

2006年5月27日

● コース概略図

八坂神社・円万寺観音堂→1.6km→山居→3.6km→鍋割川・鉢屋沢→3.7km→金勢神社→2.3km→大沢温泉

● 交通アクセス

 起点の円万寺はJR東北線花巻駅から岩手県交通鍋倉線に乗車,終点観音堂下車。ただし土日は運休のため岩手県交通湯口線二ツ堰バス停から徒歩30分となる。終点の大沢温泉はJR東北線花巻駅から岩手県交通湯口線に乗車,大沢温泉で下車。

● コースを歩いて

 花巻駅から県交通バスに乗車し二ツ堰バス停で下車。県道を志戸平温泉方面に進んですぐの交差点で右折(北に進む)します。この道は歩道があるので安心して歩く事ができます。浄水場の前を過ぎると進行方向に大きな鳥居が見えてきます。ここが円万寺の入口でバス停もあります。

観音堂前バス停 花巻駅行き 900,1305,1615 土休は運休

 鳥居の下をくぐり抜け坂道を上ります。途中,車道は右にカープしますが草に覆われた小道を直進した方が近道です(階段手前で合流します)。99段の急な階段を上ると起点の円万寺境内です。北端に自然歩道の地図入り案内板が立っています。

新奥の細道
東北自然歩道 湯治場のみち
 このコースは,チベットの権威者多田等観の一燈庵がある円万寺観音堂を起点とする全長11.2kmの自然歩道です。大きな鳥居を抜け整然とした田園地帯を行くと森林浴と川のせせらぎを満喫できる林道が始まります。林道終点との別れ道で少し足をのばすと縁結びなどで知られる金勢神社があります。つづら折の道を下り豊沢川の渓流を渡ると露天風呂で有名な大沢温泉があります。約4時間の自然と語りあえるコースです。


【写真1】起点: 円万寺観音堂

 境内には各種のお堂や古碑が建ち並んでいます。階段の終点左手に多田等観(ただ とうかん)が住んだ一燈庵,正面中央が観音堂,右が八坂神社,左が鐘楼,観音堂前に叔母杉など。創建時の坂上田村麻呂の時代から現代までの歴史的遺産があるのでじっくり見て歩きました。また,高台にあるので見晴らしが良いところに東屋やベンチがあります。

八坂神社
大同二年創立,坂上田村麻呂が持仏の観音を祀る。
本尊は坂上田村麻呂の馬頭観音像であった。
廃仏毀釈の後,観音像が紛失。
多田等観がチベットの千手十一面観音を寄贈した。
観音堂は嘉永四年(1851)建造である。
梵鐘は昭和25年(1950)多田等観の呼びかけで地元住民と協力して復活した。

 観音堂右手にある杉の巨木(叔母杉)は坂上田村麻呂ゆかりとのこと。この杉の樹齢は計算すると1200年。根本は外皮が残るのみで高さ1.5m位の位置から水平に太い枝が一本突きだしています。

叔母杉(おばすぎ)
 この叔母杉は,大同元年(806)に坂上田村麻呂が奥州蝦夷平定のために稗貫郡まで進んで来たときに「戦い勝利の後,観音様をお迎えしよう」と言ってそのしるしに植えた2本のうちの1本です。

 八坂神社と観音堂の間に正慶元年の碑(1332年)があります。梵字で刻まれていて稗貫郡内最古の碑とのこと。
 多田等観はチベット学者として知られておりチベットの首都ラサの寺院で10年間仏教を修行。持ち帰ったチベット文献を戦禍から守るため花巻に疎開しました。等観は一燈庵(いっとうあん)で自炊生活をし,また同時期に花巻に疎開していた高村光太郎と親交があったとのことです。
 ちょっと観音堂の中を覗いてみましたがチベット由来の十一面観音像を判別することはできませんでした。今後機会(祭典など)があったら拝観したいと思います。

 境内からバス停まで下り自然歩道を歩き始めます。山居集落まで水田の中の畦道を進み,突き当たりの丁字路で左折。未舗装の林道に入ります。薄暗い植林地を通ったあと鍋割川右岸の道となります。新緑と渓流を見ながら気持良い所です。林道の途中から志戸平温泉や花巻広域公園に分岐する道がありました。(志戸平温泉の分岐点は,山居2.2km,鉢屋沢1.5km,志戸平2.6km地点。花巻広域公園の分岐点は,山居3.6km,鉢屋沢0.1km,広域公園3.8km地点。)


【写真2】鍋割川

 鉢屋沢を渡ると最近整備された立派な舗装道路(ふるさと林道金矢大沢線)となります。だんだん勾配がきつくなり直射日光を遮る木もないので本コースの中で一番つらいところです。鉢屋沢の水量が乏しくなりついに源頭まで上ってきました。ここで林道は大きく左にヘアピンカープしたあと大沢温泉に向かう下り坂となります。


【写真3】ふるさと林道

 木陰の中順調に下っていくと金勢神社を示す旗が数本立っていました。ここで左折し神社に立ち寄りました。未舗装の細道を登って10分弱で到着です。

大沢金勢神社
 御神体は木製で大沢の住人照井政弘の作である。毎年の例大祭では4月29日に行われているが大久保山上より下山し大沢温泉の露天風呂において御入浴の式が行われるなど盛大なまつりである。  金勢さまは一般に男女の縁結び,小もち,出産,下の病(脱腸)などに効験あるとされているが本来は道祖神などと同じで境神として信仰されているものである。


【写真4】金勢神社

 御入浴の式の様子は大沢温泉バス停留所の中にも掲示されていました。林道に戻りさらに下ると左右に別荘らしい建物が点在します。そのまま立派な林道を進むと豊沢川を渡り県道に出ますが自然歩道は途中から分岐する未舗装の道(こちらが従来からの旧道)に入ります。この分岐点に道標が無く迷ってしまいました。ここから豊沢川まで案内板に記されているようにつづら折りの道を下ります。


【写真5】豊沢川の橋まで下る

 橋を渡り保養所や住宅地の中を抜けると県道に出ます。ここが自然歩道の終点で地図入り案内板も立っています。大沢温泉バス停は県道をしばらく南下したところにありました。


【写真6】終点の案内板

参考にしたホームページ 評伝・多田等観(河北新報社)

<完>

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