堂ヶ沢山・台羽山

岩手県花巻市
標高364.5m,355m
JR東北線花巻駅から岩手県交通バス花巻温泉・台温泉行きに乗車、花巻温泉または花巻温泉病院で下車。

【写真】左: 堂ヶ沢山山頂、右: 台羽山山頂

2009年5月2日
 806 JR水沢
 835〜913 JR花巻
 932 花巻温泉バス停
 942 堂ヶ沢山登山口
1105 鉄塔前
1135〜1155 堂ヶ沢山
1207 鉄塔前
1235 釜淵の滝遊歩道入口
1250 釜淵の滝
1302 羽山神社
1335〜1400 台羽山
1427 緒ヶ瀬滝
1440〜1515 花巻温泉バス停
1532〜1544 JR花巻
1611 JR水沢

 数年前の5月の連休中に花巻温泉周辺を通る東北自然歩道を歩いたことがある。台温泉から花巻広域公園間の標高400mほどの山中には林床一面にショウジョウバカマ、山裾の沢沿いにミズバショウが咲いていた。温泉歓楽街のすぐ近くで春の草花が観察できることに感心した。そこで今回も同じ時期に訪れ春の便りを感じたいと思う。この一帯は花巻温泉郷県立自然公園となっているので新たな発見が期待できそうだ。
 花巻温泉バス停で下車。バラ園の南に沿った道を東に進む。沿道の桜は既に散っている。サクラの木々の間をヒヨドリが飛び交う。バラ園を過ぎてから左手の斜面に上る道が文献※1に記載の登山口である。道標は無い。林道を兼ねたコースで道幅は広いが道の中央に小木が生育しているのでしばらく刈払いされていないようだ。やや荒れた道だが徒歩なら問題無さそうである。
 カキドオシ、タチツボスミレ、ヤマブキ、モミジイチゴ、ウグイスカグラが咲く。少し標高が上がるとクロモジ、キブシ、ガマズミ(つぼみ)、ヤマツツジ(つぼみ)、スミレ、ナガハシスミレ、ナツトウダイ、ヒメアオキ。ウグイスが鳴く。沿道にはサクラが一定間隔で立ち並びかなり上の方まで続いている。林道開設時に桜並木として植栽されたのだろうか。枝の損壊が激しく花付きは良くない。
 次第にウリハダカエデ、タニウツギ、ヤマハンノキなどの小木をかき分けながらの進行となる。当初は簡単に登れそうな山なのでこの程度の苦労があってちょうど良いと思っていた。ぽつりぽつりと咲くスミレ、シラネアオイを楽しみながら歩く。しかし登山口から1時間以上経過しながら当面の目標としている鉄塔に到達していない。ペースが遅すぎたのに気づく。それから本格的に藪漕ぎを始める。
 鉄塔前からアカマツ林の比較的歩きやすい道(林道)となる。小木はリョウブ、林床にはツルシキミが多い。そのまま道なりに進むと行き止まりとなった。引き返しながら山頂に至る道を探す。ここまでは林道を通ってきたので道幅が狭い登山道の入口を見過ごしてしまった。特に道標は無いが明瞭な踏み跡が続く細道が登山道だった。アカマツ、クリ林の斜面をまっすぐ上る。
 山頂域は林相が一変しブナが優勢となる。カタクリ、キクザキイチリンソウの花期は終わり林床一面にマイヅルソウ、オクモミジハグマの葉が展開する。その中にシラネアオイが咲く。山頂は広場になっていて周囲はエゾユズリハ、ブナ、ミズナラ、ヤマボウシで囲まれている。展望は葉陰から東面がわずかに望める程度である。
 下山は鉄塔前から高浜虚子句碑方面に下山した。鉄塔前から分岐する細道を下ると間もなく高浜虚子の句が刻まれた高さ約2mの直方体形状の石碑がある。道沿いにセンボンヤリが咲く。ショウジョウバカマは花期をやや過ぎ変色している。一帯はアカマツ造林地だがヒノキアスナロが点在する。道は句碑を訪ねる道として立派に整備されている。最後は佳松園に通じる車道に出る。ここに高浜虚子句碑入口と記された大きな看板が立っている。しかし堂ヶ沢山登山口の標識は見当たらない。車道を隔てて登山口の反対側は釜淵の滝への散策路である。
 釜淵の滝に寄ってみた。散策路沿道にオオカメノキ、シラネアオイ、タチツボスミレが咲く。滝ではキセキレイが餌をつつきながら歩き回っていた。
 続いて台羽山に向かう。散策路から県道123号に抜け花巻温泉病院を通過すると右手に羽山神社がある。神社前に涌く清水は相変わらず人気のようでこの時も水汲みに来ている方がいた。鳥居をくぐり参拝後、神社の裏手に回ってみるとここにはまだカタクリが咲いていた。再び神社正面に戻り神社に向かって右の斜面に続く細道を上る。すぐに花巻温泉病院前から上ってくる林道に出る。その後、山頂まで林道が続く。アカマツ、スギの中にブナが混じる。路上にセンボンヤリ、ナガハシスミレが咲く。途中、台川を挟んで対岸の堂ヶ沢山、小桜山の展望が良い。
 山頂脇にNHKの中継施設、山頂には羽山神社奥宮の小祠がある。小祠の周りをマイヅルソウが囲む。樹木に遮られほとんど展望はない。間近の小枝でヒガラが遊んでいる。横になって休憩後バスの時刻に合わせて下山する。途中にある緒ヶ瀬滝を見物し花巻温泉バス停に着くがまだ時間に余裕があったのでバラ園(この日は無料開放だった)を見学した。
 この日台羽山に登って始めて気づいたのだが台羽山は花巻温泉のメインストリート入口から見ると真正面に堂々と聳える山である。温泉街の景観形成に重要な役割を果たしていると思う。

参考文献
※1「岩手の里山を歩く」大坊孝男著 岩手日報社出版部2004年4月発行
※2「再発見 胆江地方から見える山々」及川慶志著 胆江日々新聞社2000年4月発行


inserted by FC2 system